高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病の患者さんに、
「病気を改善するために、まず何をしようと思いますか?」
という質問をします。
すると、ほとんどの場合には、
「できる範囲で運動」、「暴飲暴食、間食、アルコール、油っこい食品を減らす」、
という、誤った答えが返ってきます。
(患者さんの病状や生活環境を考えるとその答えが正しい場合もあるが、まれです)
誤った原因に共通しているのは、細かいことにとらわれたこと
誤った原因は次の2つです。
1.消費カロリーの大部分は基礎代謝で、じっとしていてもカロリーは
多く使われている
2.摂取カロリーの大部分はふだんの3度の食事で、カロリーが高くない食品から
摂っている
これらの原因には、
人間の体から出たり入ったりするカロリーのほんの一部だけを見て、
大部分は見ていないことが共通しています。
さらに、この誤りの背景には、
運動や暴飲暴食などが日常生活とは異なることをするので、
その行いが意識されやすい一方、
ごはんやおかずを3度の食事で摂るのはいつものことなので、
意識されずに記憶に残りにくいことがあります。
生活習慣病の原因を考えても、初めから記憶に残っていなければ3度の食事に思いが至ることはないでしょう。
鍵の掛け忘れが気になっても、いつもしている手順は記憶に残りにくいから思い出せないのと同じです。
正しい生活習慣病の対策を考えるときには、
生活習慣病という名前が、「ふだんの」生活習慣が原因であるのを反映している
ことに立ち返って、
消費カロリーや摂取カロリーの大部分を占める基礎代謝や3度の食事に
注意を向け直す必要があるのです。
ここまでは、細かいことにとらわれて大きなところを見逃したために、
物事がうまく運ばなくなる話です。
必要な知識を知らないことが誤りの原因になることもある
反対に、詳しい知識が足りないことが原因で、生活習慣病が治らなくなるのは、
3度の食事の中でカロリーを減らそうとするときです。
「どの食事から、どの食品を減らすとよいと思いますか?」
と患者さんに質問すると、やはり、
という(患者さんの環境や嗜好を考えると)誤った答えが返ってきます。
患者さんが答えを誤る原因になった足りない知識とは、蛋白質についてのもので、
1.人間に、体の蛋白質からブドウ糖を作るしくみがあるので、
朝食を摂らなくても脳が必要とするぶどう糖は不足しないこと、
2.一方、この蛋白質からブドウ糖を作るしくみがあるので、
食事で蛋白質を摂り過ぎると、ブドウ糖や脂肪に変わって肥満の原因になること
の2つです。
これらの知識が知られていないため、カロリーを減らすとき、
朝食・昼食や蛋白質を減らすことが選択肢に入らず、
減らしにくい夕食を減らして挫折したり、
生活習慣病を治すのに必要なカロリーを減らし切れなくなったりします。
その結果、生活習慣病を生活習慣変えることで治すことは難しいと思われています。
しかし、そうではないことは、(青い文字の)リンク先をクリックしていくと明らかになっていきます。
必要な知識を学んでいくと、おのずと全体が見えてくる
さて、以上の話の前半が、
細かいところをたくさん学んでも、いろいろ考えて知識を整理していかなければ、
全体が見えなくなる
(論語の「学びて思わざれば則ち罔し」の意訳です)
ということの例で、後半が、
物事をいろいろ考えても、基礎となる知識を学んでいないと、
現実に効果がある対策を立てることができない
(論語の「思いて学ばざれば則ち殆うし」です)
ということの例になっていることを確かめてみてください。
細かすぎず、といって大雑把にもすぎないことは、
難しく思えるかもしれませんが、楽天的に、
必要な知識を学んだうえで、全体を見るようにすれば、実行は簡単
と解釈すればよいと思います。
具体的には、このブログの、このページのリンク先をクリックしていくと必要な知識を学べます。そうすれば、ダイエット・食事療法の全体が見えてきて、実行に移すときには、もう半分以上成功しています。
さくら さん
> 頑張ろうという気持ちになりました。
ご理解いただき、私も報われた気がします。
それにしても、診察室でなら、生活環境や嗜好で患者さんの条件をすぐに絞り込めるのですが、
ネットでのやり取りは、短い文章で聞き漏らし、書き漏らしのないことを心掛けるので勉強になります。
> BMIだけに、注目するのはよくないですね。
その辺り、「BMIより体脂肪率」を1つの柱として、
年末12月28日発売の「健康」という雑誌の2月号で、
この方法で糖尿病は絶対よくなる!
簡単【血糖値を下げる3つの法則】
と題して、私の理論と本が紹介されます。
書店で見掛けたら、手に取ってみてください。
> 結果をご報告させてください。
楽しみにしています。ぜひお寄せください。
ありがとうございます。現在の食生活はなんらストレスを感じないのでこのまま継続してみようと
思います。
体重、BMI的にもう痩せなくていいような気がして、痩せすぎもよくない気がしてダイエット継続を迷っていたのですが、今回、ご意見いただきもう少し体脂肪率が落ちるまで頑張ろうという気持ちになりました。そういえば、20代の頃は40キロから42キロくらいでしたので私の骨格からいうと(かなり骨が細く、筋肉が付きにくい体型です)、現在やはり脂肪がつきすぎていると言わざるをえませんね。年齢的にもこれからどんどんLDLが上がってくると思われますので頑張ってみます。それにしてもBMIだけに、注目するのはよくないですね。安心してしまいます。つい、つい体脂肪率が高いのは年齢的にしかたがないと思っていましたが、やる気がでました。
また、結果をご報告させてください。
さくら さん
この1か月の間に、
> 朝食ヨ-グルト+果物、… お酒もほとんど飲みません。
という食生活が続いていて、なおかつ、体重が減っているなら、今も、
摂取カロリー < 消費カロリー
のはずなので、今の食事を2~3か月続けていただくとよいと思います。
体重、体脂肪率が何kgか減っているはずですから、その時点でLDLを再検し、
正常になっていれば、その体重を維持できるようにカロリーを調整してください。
LDLが正常化していなければ、
継続、または、さらにカロリーを減らして、体重を減らし、LDL再検、
を繰り返してください。現在の体脂肪率なら、体重が40kgくらいに減るまでは、LDLが正常化するチャンスはあります。
ただ、仰るように女性の場合、体脂肪率が低くても更年期以降にLDLが高くなることがあり、その時は、お薬を飲んでいただくこともあります。
あと、今の食事がおつらいなら、上の「体重維持のページ」にも書いたように、
挫折を防ぐため、今から、楽に実行できる方法で、
蛋白質不足に気を付けながら、
カロリーを減らすようにしてください。
早々のご返答、ありがとうございます。体重の変動ですが、昨年同時期は46キロで、今年8月に50キロ、体脂肪率31%となっており慌ててダイエットを始めました。原因は、おそらく、6月から8月にかけ、夜の宴席が多く外食続きだったことと、夏の間、ほぼ毎日ビ-ルを500ミリリットル飲み続けたこと、ほぼ毎日、アイスを食べたことだと思っています。6月には48キロなかったと思います。現在は、朝食ヨ-グルト+果物、昼食自作のお弁当(ご飯は80グラムほど)、夕食は、おかずは普通に、ごはんはなし、お酒もほとんど飲みません。
さくら さん
> ご意見は大変納得
好意的な評価、ありがとうございます。
さて、経過を追うと、
> 身長152cm、昨年までは、LDL100前後、HDLは85、
> 今年前半急激に太り、体脂肪率が30%を超えていた、ダイエット前は31%
> この3か月糖質制限食、朝食抜き、間食ぬきで4.5kgの減量、
> 現在の体重45kg、体脂肪が28%、LDLが147
になります。
これで分かることは…
糖質制限3か月で4.5kg減少なら、蛋白質不足は考えにくく、
体脂肪率が28%であれば、まだ体重の減らし代(へらししろ)はあるので、
LDLが正常に戻る可能性は高いと思います。
これからの食事は…
体重方程式のサイトで、太る前のデータを入力して、
楽な方法で適正なカロリーを摂る食べ方の例を見てください。
あと、
昨年の体重(できれば体脂肪率も)、
どの食事がどれくらい増えて「今年前半急激に太」ったのか
も教えていただければ、もう少し具体的な提案ができると思います。
はじめまして。この3か月糖質制限食、朝食抜き、間食ぬきで4.5キロの減量をした47歳女性です。どのような方法でも、摂取カロリ-が消費カロリ-を上(「下」ですよね:taijuuh)回らない限り絶対に体重は減らないだろうと以前から思っていましたので先生のご意見は大変納得のいくもので、こちらのブログはつい数日前にたどり着いたのですが、熟読させていただきました。私は、身長152センチ、現在の体重45キロと、もうダイエットの必要はないかと思われるのですが、体脂肪が28%あります。ダイエット前は31%でした。そして、特定健診の結果、今まで正常だったLDLが今回はじめて基準値越えの147となりました。これは、糖質制限食が原因なのか、更年期のためか、今年前半急激に太り体脂肪率が30%を超えていたせいなのか、先生のご意見をお伺いしたいと思い、コメントさせていただきました。ちなみに昨年までは、LDL100前後,HDLは85でした。HbA1cも昨年、4.7が今年、5.1に上昇しました。今後は、糖質制限食はやめ、普通食でのダイエットに切り替えようと思っていますが、ご指導よろしくお願いします。