この1年くらいの間に、ご飯や麺類などの炭水化物を減らしている、
という生活習慣病の患者さんによく会います。
その動きについて、先日、肥満学会での発表の際に、
肥満~生活習慣病の治療や指導に携わる各種の専門家と話し合う機会がありました。
医師の間では、生活習慣病を治すために炭水化物(=糖質)を減らすという
「糖質制限食」が興味の対象になっていて、患者さんたちと歩調が合っていたようです。
その理由は、医師が栄養や食事については、真の専門家ではなく、
患者さんとあまり変わらないか、少し先に進んでいるくらいの知識しかないからです。
もともと、医学部医学科には、栄養や運動を中心に学ぶ科目はなく、試験もありません。
(私が医学部にいたころには、医学部には医師を養成する医学科しかなかったが、
近頃「医学部保健衛生学科看護学専攻卒業」みたいな学歴の人もいて紛らわしいので、
「医学科」と断らねばなりません)
高血圧・脂質異常症・糖尿病など生活習慣病の患者さんに食事や栄養について指導するのは、病院の管理栄養士の仕事で、医師は管理栄養士に「指示」するだけです。
(ですから「忙しい」医師に具体的な食事の質問はしないでください)
そのような、栄養についての基礎的な知識がないところに、海外からの
「糖質を減らすと糖尿病や肥満が改善する」
という研究の情報が入ってくると、結果だけを見て興味を持ってしまうことになります。
一方、管理栄養士たちは、糖質制限食を嫌っていました。
というのは、彼らが今まで勉強してきた
「どの栄養素も、欠けることがないように、バランスよく」
という根本課題に真っ向から反する方法だからでしょう。
これで病気が治るなら、彼らはいてもいなくても同じだということで、
存在意義を問われかねないからかもしれません。
もちろん、それは彼らの過剰反応で(私の受け取り方が過剰なのかもしれませんが)
これからの栄養指導の主流がどう変わっていこうと、
実際に栄養について患者さんを指導できる基礎的・専門的な知識を備えているのは、
彼らをおいてありません。
また、近頃は、メタボ健診の後の保健指導(1・2・3)を
保健師(看護師+衛生知識の指導が仕事)も行うことになっています。
彼らは、患者さんでない一般の人たちにも知識の普及を進めていくのが仕事で、
先端の知識や深く掘り下げた知識よりも、
基本的・伝統的なところを押さえようという傾向があるので、
糖質制限食は聞いたことがあるけど、自分で指導するようになるまでにはかなり時間があると思っているようでした。
このように、職種によって(専門でない人も含めて)差異はあっても、
「肥満・生活習慣病には、炭水化物=糖質を減らす」
という知識がかなり行き渡り、
「カロリーが高い脂肪やアルコールを減らそう」
と言っていた数年前とは状況が変わってきています。
しかし、このブログで繰り返し述べていて、
学会発表で訴える目的でもあった
蛋白質の摂り過ぎによる肥満
(くどいですが、「糖質の摂り過ぎによる肥満」ではありません)
については、
「トンデモ???」
という反応しか感じられませんでした。
この点では、私の受け取り方は過剰でなかったはずです。というのは、
「蛋白質摂り過ぎ」や「蛋白質が肥満の原因」でウェブ検索を掛けても、
このブログの記事(1・2)以外は、摂り過ぎが腎臓に負担を掛けたり、
肥満の原因に「なることもある」といった調子の記事ばかりだからです。
(あと、トンデモ記事も多いです)
この
「蛋白質が肥満の原因であることなど思いもよらない人が大多数」
という状況が今後どのようなきっかけで変わっていくのか、
やはり、海外の研究でしきりに取り上げられるまで待つことになるのか、
今のところは、ごまめの歯ぎしり、切歯扼腕で見ていくしかありません。
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体重方程式・書籍
体重方程式
書籍「カロリー貯金ダイエット」
「主治医が見つかる診療所」 テレビ東京系列 2014・1・6 放送
書籍 「糖尿病を治す3つの法則」
「健康」誌 2013年2月号
このブログの管理者です
「健康」誌2013年2月号の
「この方法で糖尿病は絶対よくなる!簡単【血糖値を下げる3つの法則】」
という記事で、このブログの内容が紹介されています。
糖質制限食を知っている人には、このページなども聞き慣れない話だと思いますが、
コメント入力欄まで意見がもらえれば、たいへんうれしいです。
koboyobo さん
ご報告ありがとうございます。
> 1ヶ月3kgを上回って体重が減って
念のためですが…
急な体重減少は、蛋白質の減らし過ぎなどが原因の場合があるので、ご確認ください。
次のご報告をお待ちしています。
結果、1ヶ月3kgを上回って体重が減ってしまいました。
週1以上外食がありましたので、酒のカロリーは除外?していいのかもしれません。
継続してカロリー制限をしていますので、また随時報告させていただきたいと思います。
Kenny.T さん
「入信」ありがとうございます。
Anti-proteinism 教務部長(カリスマ不足で教祖にはなれません)として、
「LDLコレステロール高い原因」で検索すると着陸するページで足を止めたきっかけと、
入信の決め手になった記述が
どこなのかを、もし教えていただけるならとてもうれしいです。
それはさて置き…
>>結果が出たら、またご連絡
ぜひ、お待ちしています。
また、困ったことがあれば何でも、この欄へご相談ください。
こんにちは
自動車会社で勤務しているKennyです。仕事の関係で米国勤務になって、まもなく2年になります。こちらに来て半年後の検診で高脂血症と判定され、今年もその傾向が変わらずに悩んでいましたが、このサイトの記事を読んで納得しました。
ちなみに、これが会社の保健師さんから頂いた健康指導のメールです。
LDL(悪玉)コレステロールが昨年173→今年181となっております。また、赴任前は120~130台で推移されていたようですのでやはり赴任後の生活環境や食習慣の変化が影響していると思われます。運動習慣をつけるとともに魚類を多くおとりください。今回はかなり値が高めであり治療の必要がありますので、内科でご相談ください。
まずは薬でコレステロールを下げてみようと思いますが、記事を読んで並行して食事の習慣を変える決心がつきました。昨年も同じような健康指導があり、植物性蛋白質や、魚を意識して摂っていたことを猛反省しています。
健康を生業にする会社の保健師ですらこういう認識なのですから、ここの記事は新興宗教の経典と間違えられるのかもしれませんね。今日から入信して結果が出たら、またご連絡させていただきます。
koboyobo さん
>>やはり大体それぐらいで推移しているような気がします。
そうですか!
>>今月ははっきりと数値を記録していますので、
>>成功しましたらご報告させていただきます。
よろしくお願いします。
お返事ありがとうございます。
やはり大体それぐらいで推移しているような気がします。
今月ははっきりと数値を記録していますので、
成功しましたらご報告させていただきます。
しかし12月は宴会シーズンなので大体この時期は失敗に終わるんですが・・・・
koboyobo さん
>>1日で3000kcalぐらい食べる
というなら、ふだんの食事+1000~1500kcalで、
1週間では、(アルコールのカロリーは糖分を考えずに全体の1/2として)
-4200 +(1000~1500)+ 1200÷2
= -2600 ~ -2100kcal
= -400 ~ 300g
1か月だと1.5kgくらい体重が減っているという計算になります。
実際の減り方はどうですか? 教えてもらえると嬉しいです。
なるほど。やはり諸説あるぐらいですので確定した結論はまだ出ていないんですね。
私は、今一日700kcalを減らすことを実践しています。日常は問題ありませんが、
週1程度外食の機会がありまして、相当飲むのですが、之は仕事なので省けません。
経験上6日4200kcal減らしても1日で3000kcalぐらい食べるとして、飲むのも相当あるので週単位で赤字になるのではないか?と思いますが、今までそんなことはなかったので、酒のカロリーはどこへ行くのかと思っていました。
改めて酒のカロリーを計算すると、ビール1リットル(400kcal)、ワイン1本(500kcal)、焼酎300cc(300kcal)ぐらい飲んだとして、食事とあわせて4200kcalですからプラマイゼロ。
アルコールが半分しか蓄積しないなら若干の黒字が出ますね。
koboyobo さん
この質問もスルドイので、答えもシンドイですが…
>>アルコールのカロリーはエンプティカロリー
「アルコールのカロリーは、半分くらいしか蓄えられない」
と信じています(自分では厳密に確かめていないので、「信じています」)。
根拠は、アルコールの分解産物であるアセトアルデヒドや酢酸が尿や汗などから排泄され、
残り半分しか蓄えられない、という考えが妥当だからと思うからです。
肥満の患者さんが心配する「アルコールは肥満の原因だから、禁酒」説には、
(有名人の具体例を挙げて)やせた酒飲みが存在するから、その必要はないと説明しています。
一方、最近、某有力学会誌に
「アルコールが原因と思われる肥満」
の症例報告が載ったりもしたので、「半分」というのはそれほど外れていないのでは、と考えています。
また、非蒸留酒に含まれる糖分のカロリーはそのまま蓄えられるから、
「同じアルコール量の蒸留酒に変えればその分のカロリーが減った分だけ体重が減る」
という考えは正しいと思います。
しかし、その減少カロリーや、体重減少量では生活習慣病が治らない症例が多いので、
「治す」ためには、食事のカロリーをしっかり減らすことが大切だと考えています。
お答えいただきましてありがとうございました。
やはりそうでしたか。納得いたしました。
あつかましいですが、もうひとつ質問させてください。
アルコールのカロリーはエンプティカロリーなので、つまみを取らなければ酒では太らない。
という説もよく言われておりますが、これは実際にはどうなんでしょうか?
koboyo さん
>>(外界や内部環境からの刺激で、遺伝子の)作用が変動する
ことは、一般的な話としてはあります。
ステロイドホルモンの作用が、遺伝子の発現を制御することによって行われている
のはその有名な例です。
もちろん、一般的にはあるからといって、
倹約遺伝子がエネルギー摂取の多寡によって、その発現が制御される
という特殊な例まですべて正しいことにはなりません。
そう主張する者は、実験を行って証明しなければなりません。
ただ、自分が食べた物のエネルギーを正しく計算して(いわゆるカロリー計算)、
体重を適切な方法で測ってみれば、
減らしたエネルギーに相当する分だけ体重が減っているのが分かり、
その実験が初めから不要であることがはっきりするでしょう。
koboyo さん
「チートデイ」とかいうものだと思いますが、
そんなことをすれば、せっかくのカロリー減少が無駄になり、体重が減るのが遅れるだけです。
確実にカロリーを減らしていれば、体重はちゃんと減っていきます。
ただ、体重は1日の内での変動量があり、
また、女性は生理周期により、(カロリーを変化せなくても)後半に増加、前半に減少するので、
同じ時刻で測定してグラフに付けたうえで、週~月単位で減っていることを判断してください。
もし減っていない時は、油断して余分なものからカロリーを摂っていた等、必ず原因があります。
いつも読んで勉強させていただいております。
ひとつよく知られているダイエット理論で質問があるのですが、
カロリー制限を毎日続けていると基礎代謝量が下がり省エネ体質になり、
体重減少量が下がっていくので、週に一度ドカ食いをしなくてはならないという説がありますが、
これは本当なんでしょうか?
個人差によって浪費遺伝子や倹約遺伝子の所有(量?)は異なるのでしょうけど、その作用が変動するというようなことがあるのでしょうか?
あいまな さん
食欲がなくて体重が減った時には、蛋白質不足で筋肉量が減っているはずです。
(「体重方程式」p.104 [摂取量が「枠の維持量」を下回ると除脂肪組織量は減る])
その後、食べられるようになって体重は戻っていても、
主に脂肪が増えているだけで筋肉量はまだ元に戻っていないと考えられます。
しかし、蛋白質を必要量摂っていて、今まで通りの日常活動をしていれば、徐々に筋肉量も戻ってきますので、
食事量≒総摂取カロリーは
>>以前と同じ食事の減らし方で(理想の体重を維持できる食事量で)
かまいません。
ただし、(繰り返しですが)
筋肉量が元に戻るように、蛋白質の必要量をちゃんと摂るようにしてください。
こんばんは。
お返事ありがとうございます。
まさに、実体験そのものの内容だったので、コメントさせていただきました。
筋トレを始めて2週間ほどで2kg近くまで増えて、
「筋肉は脂肪より重い」とは言え、
こんなに簡単に筋肉がついたはずはないと思っていました。
運動による脂肪減少も、経験的に大した効果がないことは感じていて、
どうしたらいいのかと悩み、いらだち、
たどりついたのがこのブログでした。
今まで持っていたもやもやに、いともあっさり明解に答えをくださり、
納得して実践できました。
減量できて1年がすぎましたが、
食生活も安定しています。
前置きが長くなりましたが、質問です。
この秋に、おそらくストレスから、
急に2kgくらい体重が落ちてしまい、見た目にもげっそりしてしまいました。
その後も量があまり食べられず、
スイーツなら喉を通る日々でしたが、子どもの運動会をきっかけに、
お腹がすいてなくても食べられるようになり、
体重はすっかり戻りました。
ただ、急な変動のせいか、お肉は増えたようなのです。
「仕組みはわかっている」つもりですが、
以前と同じ食事の減らし方で(理想の体重を維持できる食事量で)
いいのでしょうか。
筋肉量が減ったと考えて、
もう少し減らしていった方がいいでしょうか。
あいまな さん
>>蛋白質を頑張って食べるのをやめ、カロリーを減らしたらするするとやせました。
「蛋白質が肥満の原因…」のページにふさわしいご報告を、ありがとうございます。
本で知識を学習し、その知識に一致した体験をされたので、
>>仕組みがわかっている
という力強い言葉が出たと思います。うれしい限りです。
>>最近、食べすぎでまたふえました
のは、減量できた安心で油断されたのだろうと思いますが、
万一、生活環境と合わないことをして挫折されたのであれば、
「メタボ氏のための体重方程式」p.84の[あなた自身の変えやすい食事を選ぶ]
で、ご自分の生活リズム・環境をチェックされるとよろしいと思います。
そのほか、分からないところがあれば、いつでも、この欄で質問してください。
できるだけ早くお答えするようにしています。
こんにちは。
私は、先生の本を読んで減量することができました。
いろいろなダイエット本や、一般によく言われていること
(食事を抜くと次に食べた時「余計に」吸収する、など)の
不可解さもすっきりとし、
「ダイエットとは、痩せる為の方法ではなく、
一生続けていける食事の仕方」そのものであると納得できました。
痩せる為に筋トレを始めた時、
豆腐や納豆を意識してよく食べるようにしましたが、
2~3kgくらいが簡単に増えていき、逆効果でした。
蛋白質を頑張って食べるのをやめ、
カロリーを減らしたらするするとやせました。
筋トレなどの運動は、あくまで体力や体型づくりのために行い、
減量は食事によって行うのだと、たくさんの人が理解すればいいのに、
と思います。
・・・最近、食べすぎでまたふえましたが、
仕組みがわかっているので、今までどおりのカロリーに戻して、
またベストに落とします。