今回は、専門家・玄人の能力をどう使うと自分の目的を実現できるか、
という話をします。
特定保健指導(メタボ健診のあとに行う生活指導)のカリキュラムを見直して、
このブログで蛋白質について書いてきたことを取り入れようとしたのですが、
指導を行う管理栄養士や保健師には必要な知識でも、指導される人に果たしてこれだけ高度な内容が必要か、と考えたことがきっかけです。
その内容とは、
- 蛋白質には必要量があり、ダイエット・食事療法でそれ以下しか摂らないと、
筋肉量(除脂肪体重)が減るなど困ったことが起こるので、してはならない。 - 一方、必要量以上に摂った蛋白質のカロリーが消費されないと、
脂肪として蓄えられるので、蛋白質を減らしてもよい人が多い。
例えば、夕食だけで必要な蛋白質が摂れている人は、朝食や昼食は炭水化物だけの食事にして蛋白質は摂らないようにしても問題は起こらない
・・・
などです。
で、結局、
保健指導を受ける人のなかで、意欲のある人が病気を治すきっかけをつかみやすいように、
できるだけ分かりやすい形で伝えることに決めました。
この結論になるまでに考えたことは、こうです。
専門家、またはその集団が提供する能力と、それを受け取る側の能力には、
その差をいくつかのレベルに分けることができ、
そのレベルによって専門家の能力を(お金を出して)使うか自分でやってしまうかが決められています。
1.自分でするか、専門家の能力を使うかに選択の余地がないほど
専門家が有利な場合。例として自動車や家電製品などの工業製品を買うなど。
車やパソコンを買うとき、それがどのようして作動して、作られるかを(興味があるにせよ)知る必要はありません。
黙って(または値切って)お金を払って、必要なもの、またはそのものが提供する、移動やデータ処理といった機能を受け取ることができるからです。
また、近年、野球のメジャーリーグでは、裕福な家庭に育った選手が増えてきたとのことです。
子どもたちに野球を教える職業的な指導者がいて、
その指導を受けるために払うお金がある家庭の子どもが有利だから
なのだそうです。
日本でも、東大生は、進学校に入るための指導にお金が必要なので、親の所得が多い、といわれ始めてから久しいです。
このようなときには、
野球や勉強がどうすればできるようになるかという指導法が確立されていて、
指導する人もその指導法を身に付け、自分の指導能力を高めるために努力し、お金や時間も掛けています。
お金を払うほうの人も、指導する専門家の知識や能力と指導を受ける側の能力の差がはっきりしていると認めているでしょう。
2.上に比べて自分と専門家の能力が比較的近づいていて、
趣味としてできないことはないが、時間が掛かったり、
結果が不確実だったりするので、専門家の能力を使うとき。
例として、日曜大工、清掃サービスや庭の手入れなど。
3.自分と専門家の能力に違いはないが、
自分で行うと思い込みや希望的観測で、結果が不確実になる恐れがあるとき。
医師が病気になって他の医師の診察を受けるときなど。
生活習慣病・メタボリックシンドロームの保健指導を受けようとするときは、上の2.か3.のレベルだと思っている人が多いと思います。
「管理栄養士や保健師などの専門家とはいっても、
『食事をバランスよく食べ、運動して、アルコールはほどほどに』、
くらいの知識なら自分にだってあるから、能力の差はそれほどないだろう。
あとは、ペースメーカ、または助言者がいたほうが実行しやすいだろうから、
これを機会に指導を受けておこうか」
と思っている人が多く、また、実際その通りなので、
特定保健指導の現状は、「そこそこの」結果しか出ていません。
(具体的な数字は「メタボ健診効果」のキーワードで検索エンジンを利用すると出てきます)
それで、保健指導を受ける必要がないかというと、決してそうではありません。
メタボ健診・保健指導を受ける世代の人は、次のようなことがしきりに言われていた時期があったことを思い出してください。
「家電やパソコンの取扱説明書や解説書は分かりにくい、
分かっている人には分かるが、分からない人にはいつまでたっても分からない、
メーカーや、解説書を書く人はもっと分かりやすく書かなければならない」
ところが、この言葉を、いわば真に受けて、分かりやすい解説書が出るのを待っていた人は、結局パソコンを使えるようにはなりませんでした。
いまだに、分かりやすい解説書や使いやすいパソコンなどありませんから、
使える人は分かりにくい解説書を解読したり、気難しいパソコン本体と格闘したりしながら現在の能力を身に付けてきたのです。
このことから分かるのは、
保健指導を行う専門家のレベルが低い、といくら指摘しても、
体重が減って自分の体の状態が良くなることはない、ということです。
現在の保健指導の方法がアメリカの野球や進学塾の指導法のレベルに達していない以上、
専門家の助けを借りながら、パソコンのように自分で取り組んでいくしかありません。
幸い、このブログを見つけた人は、(このブログを解読さえすれば)
どうすれば効果的に、弊害がなく体重が減らせて、それを維持できるか、
が分かり、それが実現できる可能性が開けています。
どの時代にも、批判精神を持ちながらも、
文句を言うだけでなく、しっかり頭を働かせようとする人が
良い結果を得ることができます。
[…] また、近頃は、メタボ健診の後の保健指導(1・2・3)を 保健師(看護師+衛生知識の指導が仕事)も行うことになっています。 彼らは、患者さんでない一般の人たちにも知識の普及を進めていくのが仕事で、 先端の知識や深く掘り下げた知識よりも、 基本的・伝統的なところを押さえようという傾向があるので、 糖質制限食は聞いたことがあるけど、自分で指導するようになるまでにはかなり時間があると思っているようでした。 […]