前回は、高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病などの生活習慣病が
治らない原因を医師やそれぞれの学会の指導方針を見ることによって、考えました。
今回は、なぜ治らないかを、
生活習慣病の患者さんに治ってもらうことそのものを目的に作られた、
特定保健指導(いわゆるメタボ保健指導)の内容から見ます。
問題点は4つあります。
1.実行が難しいのに、効果がない目標例が示されていること
特定健診(特定保健指導を受けてもらう人を選ぶための健康診断)
の問診項目には、
・ 運動、食べる速さ、夕食が遅いか、
など、実行しても効果が少ないにもかかわらず、
実行自体が難しいことが挙げられています。
カロリーをあまり減らせない運動や、
カロリーを減らすことと直接関係がないことをどれだけ実行しても、
体重が減り生活習慣病が治る、という結果が得られる人は多くありません。
その人の生活環境に応じて、容易に実行できる方法は、
体重方程式-2.無理を減らす のページで見ることができます。
2.食事や運動のカロリーを決めるときに、
とかく話題になっている腹囲や標準体重を基準にすること
この基準値以下の人でも、体脂肪・内臓脂肪が多い人は、体重を減らすと、血圧、コレステロール、血糖値が改善する人が多くいます(このような人を隠れ肥満といいます)。
かりに、この基準値まで腹囲や体重を減らしても、
まだ体脂肪・内臓脂肪が多い場合には、
さらに体重を減らして病気を治すチャンスが減ってしまいます。
なぜなら、何カ月も掛けて目標の体重まで減らしたのに、その時点で、
「2回目の目標に向かってさらにカロリーを減らしましょう」、
と言われて(気を取り直して)取り組める人は少ないと予想されるからです。
このようなことのないように、
保険指導を行うと決めた人には、腹囲や体重以外に、
隠れ肥満を考慮した内臓脂肪や体脂肪の値を測定した上で、
減らすカロリーを決めるべきです。
それ以前に、
保険指導を受けてもらう人を決めるための特定健診(メタボ健診)で、
隠れ肥満の人が初めから保険指導そのものを受けられない
という問題があります。
ただし、この問題については、
全員に内臓脂肪などの測定を行うと、費用対効果の問題があるので、
やむを得ないと考えています。
(もともと特定健診・保健指導が作られた目的の中に、
健康保健財政の破綻を防ぐため、ということも含まれているので、
費用の問題は無視できないからです)
3.食事や運動のカロリーを決めるときに、
「体重が減ると消費カロリーが減る」
ことが考慮されていないこと
カロリーを減らしたときに、数ヵ月して体重が減ってくると、
消費カロリーも減って体重が減りにくくなります。
減らすカロリーは、このことを考慮して決めないと、
目的の体重まで減ることはありません。正しいカロリーの設定が必要です。
また、カロリーを減らし始めてから数か月後には、
始めほど体重が減らなくなるので、
それによる焦りで実行が難しくなることがあります。
これには、正しく体重減少の予測をすることが有効です。
隠れ肥満や消費カロリーの減少を考慮した「減らすカロリー」は、
体重方程式-1.カロリーを減らす のページで、
消費カロリーの減少を取り入れた体重予測は、
体重方程式-4.挫折を減らす のページで見ることができます。
4.設定したカロリーが具体的にはどれくらいの食事や運動になるか
を指導する方法が示されていないこと
保健指導の教材の中で、
減らすべきカロリーを把握するために使えるのは、
間食や外食のカロリーなどのカロリー例が示されているものがあるだけです。
これらを摂らない人に、ふだんの食事から
どのようにカロリーを減らせばよいかは、
保健指導を実施する担当者の手腕・裁量にまかされています。
確実に(かつ弊害なしに)ふだんの食事を減らす方法を指導できる人は、
少ないでしょうから、運動で実現不能な目標を掲げたり、
前に述べた「効果がない目標」でお茶を濁したりしているのが実態だと思います。
「減らすカロリー」をどのように実現するかは、
体重方程式-3.手間を減らす のページで見ることができます。
・・・
以上、特定保健指導の問題点をまとめると、
生活習慣病の患者さんに治ってもらうという目的に対して、
それを達成するために有効な手段が打ち出されていない、
ということになります。
意余って力及ばず、というところでしょう。
特定保健指導に関わる保険者、指導担当者などの皆さん。
現行の特定保健指導の内容では、
掛けた費用が、健康保険からの支払いの減少によって回収できる
ことはあり得ません。
しかし、この目標を達成するためには、特定保健指導を
このブログの内容に沿って少し変えるだけで十分です。
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