ダイエットに関係がある計算式・その4は、体重と体脂肪率から、体脂肪量を求める式。(体脂肪量の減少と体重の減少の意味の違いを無視したので、ダイエットに運動が必要、という誤った常識が生まれた)

体脂肪率とは、体重に占める体脂肪量の割合です。すなわち、

  体脂肪率 = 体脂肪量 ÷ 体重

また、この式から、

  体脂肪量 = 体重 × 体脂肪率

になるので、体重が80kgで体脂肪率が25%の人は、
体脂肪の総量が(80×25÷100=)20kgだということになります。

体脂肪率は、いろいろな計測法がありますが、

近ごろはインピーダンス法といって、電気が体をどれだけ流れやすいかによって、
体脂肪率を推定する(手で握ったり、体重計についていている電極を足で踏んだりする)機器を使う方法が一般的です。

この方法は、脂肪が電気を流しにくい(水は通しやすい)という性質を利用しています。ですから、運動後に汗をかいていると、体の表面を電気が流れやすくなっていますから、体脂肪率が低く出ることがあります。

運動直後に体脂肪がかなり減っているような計算になっていても、
(たとえば、1.2%減ったときは80kg×1.2÷100≒1kg)
このブログで何度も言っているように、運動で消費するカロリーは多くないので、減った体脂肪量(g)は、消費したカロリー(kcal)を9で割って求めなくてはなりません。(たとえば80kgの人が30分歩いたときに減る体脂肪量は17gです)
[*]
これは、脂肪1gが持っているカロリーが9kcalなので、9kcal減らすごとに1gの割合で体脂肪が減るからです。

一方、前々回では、カロリーを消費したり、摂取を控えたりしたときに、7kcal(7.2kcalというときもあります)が1gの割合で、体重が減ると書きました。

何が違うのでしょうか?
よく見ると、9kcalのほうは、1gの「体脂肪が減る」である一方、
7kcalのほうは、1gの「体重が減る」となっています。
つまり、体脂肪が1g減るのと、体重が1g減るのは、違うのです。

順に説明しましょう…

脂肪組織(脂肪細胞)1gには、脂肪が0.8gと、水が0.2g含まれています。

ですから、脂肪が0.8g減ったときは、脂肪組織の中の水も0.2g減って、
脂肪組織全体では1g減ることになります。
同じように、脂肪が、8g減れば脂肪組織は10g減るし、
0.8kg減れば脂肪組織は1kg減ります。

ところで、体脂肪(量)とは、体中の「脂肪」を全部集めた重さです。
(脂肪組織の重さではありません)

ですから、体脂肪が0.8kg減ったときには
(脂肪組織の中の水0.2kgも同時に減って)脂肪組織が1kg減り、
体全体の重さ、すなわち体重も1kg減るのです。

さて、脂肪を0.8g減らすためには、
(脂肪1gは9kcalなので)9×0.8≒7kcal減らせば十分です。
これだけで、脂肪組織中の水0.2gもいっしょに減って、体重は1g減ります

結局…
9kcal減らせば、体脂肪が1g減りますが、
7kcal減らすだけで、体重は1g減るのです。

以上の説明が分かりにくいなら、「似ているが違う」ものは混同しやすいのが原因です。
「体脂肪=脂肪」と、「(水を含んだ)脂肪組織」の違いを意識しながら、
上の[*]のところまで戻って、もう一度ゆっくり読んでください。

さて、この「体脂肪」と「脂肪組織」の差がダイエットにまつわる誤った常識を生み、
それがダイエットの実行を困難にしてきたという話に移りましょう。

除脂肪体重というのは、体重から体脂肪量を引いた値、すなわち、

   体重 - 体重 × 体脂肪率
 = 体重 × ( 1 - 体脂肪率 )

  「筋肉や内臓の重さを表す」

ことになっています。
先ほどの80kgの人なら、80 - 20=60kgが除脂肪体重です。

この人がダイエットをして、体脂肪量を8kg減らしたとき、
脂肪組織に含まれていた水も(8 ÷ 0.8 - 8=)2kg減ります。
ですから、体重は(80 - 8 - 2=)70kgまで減ります。
(図に書くなどして、ゆっくり読んでください)

このときの体脂肪量は(20 - 8=)12kgなので、
除脂肪体重は(体重70kg - 体脂肪量12kg=)58kgまで減ります。
でもそれは、脂肪組織に含まれていた水が2kg減っただけで、
筋肉や内臓が減っているのではありません。

ところが、除脂肪体重は「筋肉や内臓の重さを表す」ことになっているので、

  「運動が足りなかったので、筋肉が減ってしまった」

という誤った解釈になってしまいます。

生活習慣病の患者さんに減量してもらうと病気が改善した、という研究で、
「運動も頑張ってもらったのに、結局、除脂肪体重が減ってしまった」
という、研究者自身の(いかにも残念そうな)考察を見たことがあります。

しかし、私が体重から水を含んだ脂肪組織の重さを引いた値を計算してみると、
減量の前後で変化はなく、筋肉は減っていないはずでした。
(繰り返しますが、このように、筋肉は全く減っていなくても除脂肪体重は減るのです)

「除脂肪体重」の概念の修正案
 除脂肪組織量は、体重から脂肪組織の量を引いた値で、

   体重 × ( 1 - ( 体脂肪率 ÷ 0.8 ) )

 で計算できます。蛋白質を必要量摂取すれば、
 食事だけ(運動なし)で体重を減らしても、この値は減りません。
 「運動しても除脂肪体重が減る」、
 「食事を減らしたが運動しないから除脂肪体重が減った」
 と悩んでいる人は計算し直してみてください)

一方、どれだけ運動しても、全員の除脂肪体重が減るなら、さずがに、何かおかしい?
ということになり、除脂肪体重の定義そのものも見直されたかもしれません。
ところが、中には、激しい無酸素運動をして、脂肪組織中の水が減った量より多くの筋肉を増やして、除脂肪体重が減らない~増やす人もいますから、
(図に書くなどして、ゆっくり読んでください…)

  「運動している人の方が除脂肪体重が減りにくい」

ということになり、結局、

  「体重を減らすときには、食事のカロリーを減らすだけでなく、
   運動も同時にしないと、筋肉量が減る(ので体に良くない)」

という誤った常識が誕生したのでしょう。

こうしてできた「ダイエット時の運動の義務化」により、義務化されているくらいなら、

  運動には(実際よりも大きな)効果があるはず、

というこれも誤った解釈ができて…

運動によるカロリー消費・体重減少効果も過信されて、

  歩いても歩いても一向体重は減らない

という患者さんが増えてしまったのです。
(今日のの診察では、運動を始めてから体重が増えた人がいました。
 アイスクリームがおいしいとのことでした)

本日の結論:
体重を減らして、生活習慣病を治すのに(ほとんどの場合)運動は必要ありません。
(特に、糖尿病の場合

コメント / トラックバック3件

  1. […] 必要なことは、蛋白質を必要量摂ることだけで、運動は必要 […]

  2. […] 動しないと筋肉が減る、というのは誤りですが、 そういわれる […]

  3. […] 本を読んだ人は、 ここでいう除脂肪体重は除脂肪組織体重のこと […]


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