体重を体脂肪量と除脂肪体重に分けて考えると、体重変化の原因が分かる・その2(この違いが分からずに効果がないことをしている人が多い)

前回から、体重をいくつかの成分に分けて考えると、
その変化を正しく解釈でき、意のままにできるようになる、という話をしています。

検索エンジンやブログ・ランキングからこのブログに来てくれた人は、
前回の記事を読んでからのほうが理解しやすいと思います。

今回は、除脂肪体重を2つに分けたうちで、筋肉・骨や内臓の成分の重さが、
どのような条件で変化するかを見ていきます。
このうち、骨や内臓の重さはあまり変化がないので、筋肉の量が問題になります。

まず、筋肉を増やすためには、蛋白質についての記事で書いたように、

 1) 蛋白質を食事から摂る量を通常の必要量より多くする
 2) 無酸素運動(ウェイトトレーニングなど)を行う

という条件をともに満たす必要があります。
さらに、

 3) 男性ホルモンが多い(男性である)、
 4) 生まれつき筋肉質の体質である、

という通常は自分で変えられないことも必要なので、筋肉を増やすと言っても、そう簡単なことではありません。

反対に、筋肉を減らすためには、別の蛋白質についての記事で書いたように、

 1-) 蛋白質の摂取量を必要量よりも減らす、
 2-) 無酸素運動を(もししていたら)減らす、

のうちどちらかを満たせば十分です。
(andを否定すると、それぞれの否定のor:懐かしいド・モルガンの法則です)

1-) の条件が満たされることがあるのは、
体重を短期間で減らすことをねらってカロリーを極端に減らしたり
(実際に急速に減ります)、
食事の内容にあまり気を使わず炭水化物ばかり摂っていたりするときです。
蛋白質の摂り過ぎで体重が減らない人が多い一方で、
蛋白質が足りなくて、この条件を満たしている人もときにいます。

2-) の条件は、
初めから無酸素運動をしていない人が、今まで通りしないままでいても、
「減らす」ことはできないので、満たすことはできません。

2-) の条件が満たせない人のうちで、
1-) の条件を満たしていない、すなわち、蛋白質を必要量以上に摂っている人は、
(どちらか1つでも満たせばよいのに)
どちらの条件も満たせないので、筋肉を減らすことはできません。

回りくどい言い方をしましたが、ふつうの言い方でいうと、

  • 蛋白質を必要量摂っていれば、
    無酸素運動をしなくても筋肉は減らない

ということです。

これは、よくいわれている、

  ・ 食事を減らすだけで運動しないと筋肉が減る、

という話に矛盾していることに注意してください。
運動しないと筋肉が減る、というのは誤りですが、
そういわれることになった原因は、除脂肪体重の定義に関係しています。
(興味がある人は、青い文字をクリックしてリンク先を見てください)

以上で、体重を構成する3つの成分、すなわち、

体脂肪、水分、筋肉・骨や内臓が
どのような原因で
どう変化するか

を個別に見てきました。

それを下の表にまとめたので、前回と今回の内容を確認しておきます。

体重の
構成成分
  増える原因
  (食事等)
   減る原因
   (生活・運動等)
      変化
 速度  上限  下限
体脂肪 蛋、糖、脂 基礎代謝、有・無酸素  遅  大  大
除脂肪体重 筋肉等 蛋、無酸素 蛋不足  中  小  大
水分 食事、飲水、
月経周期・後半
汗、尿、不感蒸泄、
ダイエット開始時
 速  小  小

体重を構成する成分のうちで、
減らそうとしているのは体脂肪で、そのためには、
増える原因となっている蛋白質・糖質・脂質を減らすのが有効です。

一方、減らしていけないのは筋肉・内臓で、そのためには、
蛋白質不足にならないようにします。
ただし、それは蛋白質を必要量より減らしてはいけないという意味で、
全く減らしてはならないということではありません。

体脂肪を減らす方法を(生活環境や好みに合わせて)実行していくときには、
確かに実行できているか、他の原因で妨げられていないかを知るために、
体脂肪や筋肉の量を確認しながら行う必要があります。

この2つの量の変化は、体重・体脂肪計で測った値と計算で求めた、
体脂肪量や除脂肪体重の変化から推定できます。そのとき、
除脂肪体重に含まれる水分の変動と、体脂肪計の誤差の影響をできるだけ減らすために、

  • 1日のうちで同じ時間帯に測る

ことが必要です。

そのような注意をしても、体脂肪や筋肉量の(真の)変化量が、
変動・誤差よりも大きくなるには通常数日以上の時間が必要です。
真の体脂肪量が減っているのに、誤差がそれを上回ると
測定した値は増えてしまいます。それで意欲をなくしたりしないように

  • 週に1~2回より多く測らない

ほうがよいでしょう。

コメント / トラックバック19件

  1. そうすけ より:

    taijuuh先生、ありがとうございました。

    >50年以上前に発表された数式の右辺にある変数は、体重と身長だけで、体脂肪計で測定した値より精度が悪くなります。
    …そんな古いものだったとは知りませんでした。不愉快な思いをさせてしまい、大変失礼致しました。もっともらしい数式ながら、根拠や基準が全く書かれていなかったので、どれだけ精度が高いものなのか分かりませんでした。Wikipediaに書かれてあることを信用し過ぎてはいけないですね。

  2. taijuuh より:

    そうすけ さん

    今、我々が使っている体脂肪計は、体重と身長に、年齢と、測定した生体インピーダンス(電気の通りやすさ:体脂肪が多い人ほど通りにくい)を加えて、精度の高い=真の体脂肪に近い値を出力します。

    それに対して、お示しの、50年以上前に発表された数式の右辺にある変数は、体重と身長だけで、体脂肪計で測定した値より精度が悪くなります。申し訳ないですが、精度の悪い数字をもとにして、何かを論じようすること自体が誤りなので、このご質問にはお答えできません。

    ただ、文面からは、ご自分の体型が標準より筋肉が少ないスリム型なのか、筋肉が多いマッチョ型なのかがお知りになりたいのだろうと見受けました。

    答えは、日本人のほぼ標準、白人の標準よりはスリム寄り、といったところです。根拠・基準はなく、患者さんの身長・体重、体脂肪率、実際に診察で観察した体型を見続けてきた私の経験から、ということになります。

    このスリムかマッチョかという体型も、身長と同じく、大人になってからふつうの生活をしている(蛋白質が必要量摂れていて、特別なボディビルディングをしていない)人は、体重がどう変化しようとほとんど変わりません。

    そのことは、同じ人の、

    体重×(1 - 体脂肪率(%) ÷ 80)
    (体重から、物質としての体脂肪ではなく、脂肪組織=脂肪細胞の重量を引いた値)

    をダイエットの前・途中・後、どの時点で計算しても、ほぼ一定であることからわかります。そうすけさんもご自分のデータで計算してみてください。

    前のコメントで「科学研究の威力・有用性」であるとか「この基準自体がよくできている」とか言ったのは、このような裏付けがあるからです。

  3. そうすけ より:

    taijuuh先生、そうすけです。しつこいようですが、また質問させてください。

    除脂肪体重の推定法
    ヒトの除脂肪体重は、次の計算式で推定できるとする研究結果が存在するようです。
    男性の場合
    (除脂肪体重)(kg) = 0.32810 * (体重)(kg) + 0.33929 * (身長) (cm) – 29.5336

    実際自分の場合どうなるのか?計算式で算出した結果が以下です。diet前は推定値より2kgも少なく、diet後は推定値より3.58kgも多いという結果になりました。推定除脂肪体重より少ないと(筋肉量その他が少ないから)拙いのでしょうか?逆に多いと(筋肉量その他が多いから)良いのでしょうか?どの位その推定値より多ければ、筋肉質というようなデータはあるのでしょうか?※年齢によっても違うでしょうが…
    何度も質問して申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。

    そうすけ(2014年diet前54歳男性:100kg・40%時)の場合
    (除脂肪体重)(kg) = 0.32810 * (体重)(100kg) + 0.33929 * (身長) (173cm) – 29.5336
    =32.81+58.7-29.5336=61.97…100kg-100kg*40%=60.0kg…61.97kg-60.0kg=1.97kg

    そうすけ(2019年diet後58歳男性:62.5kg・14.8%時)の場合
    (除脂肪体重)(kg) = 0.32810 * (体重)(62.5kg) + 0.33929 * (身長) (173cm) – 29.5336
    =20.51+58.7-29.5336=49.67…62.5kg-62.5kg*14.8%=53.25kg…49.67kg-53.25kg=-3.58kg

  4. そうすけ より:

    taijuuh先生、詳細な回答ありがとうございました。
    >1日に卵2個と豆腐1/2丁があれば、肉や魚がなくても蛋白質の必要量は摂れています。

    …その程度でいいとは凄く意外でした。
    朝食と昼食が非常に貧相な分、夕食はそれなりの量を食べていますので、
    昼は卵1個と納豆か豆腐を食べていれば必要最低限な訳ですね。安心しました。
    ずっと昼食に対して(栄養失調になるかも?と)不安があったものですから。

    色んな質問に真摯に回答して頂き、本当に感謝しております。
    また質問させて頂くかも知れませんが、その時は宜しくお願い致します。

  5. taijuuh より:

    そうすけ さん

    「インスタント麺 スープ カロリー」でググると、だいたい 50kcal くらいでした。

    経済的な理由とおっしゃるなら、同じ100円でおにぎり1個にすると、200kcal ですからもっとカロリーを減らせます。インスタント麺でもおにぎりでも、どうせすぐお腹が減りますし、お腹が減ったからといって体がエネルギー切れになるわけでもないので、お勧めです。

    > 栄養価

    というのは漠然とした言葉で、具体的に最も脅威になりうるのは蛋白質不足です。経済的に安くあげるなら卵と大豆製品になるのですが、そうすけさんの体格なら、1日に卵2個と豆腐1/2丁があれば、肉や魚がなくても蛋白質の必要量は摂れています。それ以上摂った蛋白質は、このページ(体重を体脂肪量と除脂肪体重に・・・その2)に書いているように脂肪の原料になります。

    なんとなく「質の高い食事」というものが存在すると思っている人が多いのですが、最も大切なのは、多すぎず少なすぎないカロリーと蛋白質、つまり質より量が大切です。あとビタミンや食物繊維のため野菜や海藻を摂るようにしていれば、食事について大事なところはほぼ押さえられています。

  6. そうすけ より:

    taijuuh先生、詳細なな回答ありがとうございました。

    >摂取カロリーを減らすと老化を阻止し、長生きする…しかし、運動させてもその効果は(おそらくは活性酸素のせいで)さほどではありません。
    …年齢の割に老けて見られるのはその所為なのかも知れません。アドバイスの通り、運動量を減らし、摂取カロリーを減らすように生活習慣を変えて行きます。

    >筋トレだけでなく有酸素運動も積極的に行わずとも、食事のカロリーを管理していけば体重は維持できます。
    …最近ずっと間食が多いので、できるだけ余計なカロリー摂取を控えるよう、生活習慣を一度見直します。

    貴重なご指摘、ありがとうございました。

    食事の件でずっと気になっていることがあります。
    昼食時に(経済的な理由で)恥ずかしながら、即席インスタントラーメン(袋麺)を食べることが多いのですが、麺を揚げた油を極力摂取したくないため、茹でた湯は必ず切って捨て、スープも極力飲み干さないようにだけは毎回注意しています。

    400~450kcal前後の袋麺が多いのですが、湯切りしてスープを飲まずに捨てることで、正味摂取カロリーはどれだけ減っているのか?疑問に思っています。せいぜい50kcal程度なのか?100kcal位は減るのか?頻繁に食べる食品なのでどれだけカロリーが減るかは私にとって切実な問題です。

    もっとまともな食事をしろと言われそうですが、あまり昼食代をかけられないという経済的な事情があります。できるだけ安くて栄養価の高いものがあればいいのですが、他に思いつくものがありません。※一応ラーメンには必ず卵を入れたり、納豆(84kcal)や冷奴(86kcal)などで蛋白質が不足しないよう気を付けてはいます。

    大豆がいいと言っても、毎日昼食に大豆を主食にする(ご飯に黄粉を掛けて食べるとか)訳にも行きませんし…。何度も質問して申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。

  7. taijuuh より:

    そうすけ さん

    これからの季節、毎日10kmのジョギングはお勧めしません。理由は2つ。

    昨年夏の猛暑で、練習に明け暮れている高校球児さえも体調を崩した人が続出しました。そうすけさんが走る夕方でも、近年の暑さだと事故の原因になりうるので、距離の短縮または中止をお勧めします。

    ジョギングを減らした分、5km 当たり摂取カロリーを 150kcal 減らせば体重は維持できます。牛乳 200ml と野菜ジュ-ス 200ml で 200kcal 以上のカロリーがあるのでそれを水・茶・コーヒーや0カロリーの清涼飲料水などに替えれば、十分におつりが来ます。逆に言うと、今まで走っていた 7km は牛乳と野菜ジュースで効果が消えていたことになります。

    もう一つは、運動を続けると体の中に活性酸素ができて、細胞を老化させることになるからです。原始的な動物から高等な動物までいろいろな動物で、摂取カロリーを減らすと老化を阻止し、長生きすることが確かめられています。しかし、運動させてもその効果は(おそらくは活性酸素のせいで)さほどではありません。そのことを端的に証明した実験として、

    1. 摂取カロリーを制限して、運動させないネズミ
    2. 摂取カロリーを制限せず、運動で 1.と同じ体重に維持したネズミ
    3. 摂取カロリーを制限せず、運動させないネズミ

    の寿命を比べた、というものがあります。
    結果は、そうすけさんの予想とは違うと思いますが、1. が 2. よりも長生きし(3. はもちろん短命でした)、運動による老化促進の存在が伺われるものとなりました。そのほかにも、アスリートは短命、運動量が減った現代人が長生き等の知見から、運動は必ずしも健康を増進しないと考えています。

    以上の根拠により、水分補給を考える前に、まず運動量を減らすことをお勧めします。

    あと、体重が 62kg の人が 5km のジョギングで減る脂肪は 20g 以下ですから、0.1kg 単位で測れる体重計で運動の前後に体重を計れば、それがほぼ運動で失われた水分になり、補給すべき水分量の参考になります。

    > 体中水分量が減ると脂肪燃焼効率的に支障が出る

    ということに根拠はなく、運動で減少する体脂肪量は消費したカロリーで決まります(例として上記の20g。これは水分の喪失による体重減少と比べるととても少ない)。それを書いた人は、水分補給をしないと発汗量が抑えらるので体重が減りにくなることに気づき、それを間違って解釈したのだと思います。

    そういうことで、筋トレだけでなく有酸素運動も積極的に行わずとも、食事のカロリーを管理していけば体重は維持できます。もし、食事の注意で辛いことがあれば、また質問してください。

  8. そうすけ より:

    taijuuh先生、今回も素早い的確な回答ありがとうございました。
    長年の疑問が解決致しました。ありがとうございます。
    他にも色々質問したいことがあります。
    お忙しいかと思いますが、宜しくお願い致します。

    Q.ランニング時の水分補給の件…走っている間に水分補給をしないと色んな意味で拙いのでしょうか?帰宅後の補給じゃやっぱり遅いのか?という問題

    夏のランニングは物凄く汗をかくので、水分補給しながらがよいのは分かっていますが、嘗てリュックを背負い中にペットボトル800mlの水道水を入れて、要所要所で補給しながら走っていましたが、できるなら身軽にリュックは背負いたくない、いちいちリュックからペットボトルを取り出して飲む行為が面倒臭い、飲むと異様に汗をかいてしまう、リュックが破損してしまった、寒くなってあまり汗をかかなくなった…などの理由で、徐々に止めてしまいました。

    体中水分量が減ると脂肪燃焼効率的に支障が出る…みたいなことが書かれてあったので、ずっと気にはしているのですが、これから益々暑くなる梅雨から夏の時期、水分補給をどうしようか考えあぐねています。※当初無知だったので、夏場は(どうしても生水を飲むのに抵抗があり)水道水を淹れた900mlペットボトルを冷凍庫で冷やし凍らせたものをリュックに入れて2km毎に飲みながら走っていました。「氷水を飲むなど言語道断!」と書かれてある記事を読んですぐに止めましたが…。

    6/6日のランニング時、500mlペットボトルに水を入れて、手で持ったまま走りましたが、やはり手に持って走るのは僅か500mlでも重く感じますし面倒臭いです。リュックを背負い中に入れるとか、ポシェットに入れるとかすればいいのでしょうが、そこまでして給水しないとやはり夏はヤバい(脱水症状になるとかで)のでしょうか?

    ※夕食後1.5時間後の18:30-19:25に10kmジョギングしており、帰宅後13階あるマンションの非常階段を2往復「階段昇降運動」してダウンにしています。帰宅後はすぐに熱い緑茶180mlを2-3杯、その後就寝までに野菜ジュース、牛乳などで水分補給しています。時々プレーンヨーグルト摂取。冬時期は頻尿気味でしたが、運動した日の夜は殆どトイレで目が覚めることはありません。

    宜しくお願い致します。

  9. taijuuh より:

    そうすけ さん

    > 緩んだお腹の皮

    数10kgのダイエットを行ったときには、ハードな筋トレをしても、「皮余り」(でググってください)は避けることは難しいです。数年たてば何もせずともある程度改善しますので、そのまま様子を見るのがお勧めです。

    > 片足立ち、椅子から立ち上がる際

    筋力不足もあるが、体重の分布が変わったので、脳が動作に必要な力の入れ方を再学習している最中だと思います。ふつうに日常活動+軽い筋トレで、だんだん上手になるはずです。

    数か月してうまくできるようにならないなら、股関節が固くなり上体を前に倒せなくなっていることが原因の場合があるので、ストレッチ運動を加えるといいと思います。

    > 「筋トレ+有酸素運動+食事制限」の三つ巴バランスが良い理想的なダイエット

    を唱えている人がいるのかもしれませんが、賛同しかねます。

    体重が大幅に重い患者さんには、基本的には運動を禁止しています。なぜなら、体重が重い人が有酸素運動をすると、膝・腰に障害が出ることが多く、また、高血圧・脂質異常症・糖尿病で動脈硬化が進んでいる人は、心筋梗塞・脳卒中を起こすこともあるからです。あと、尿酸値が高い人は運動がきっかけで痛風発作を起こすこともあります。そういう理由で、患者さんには、

    「食事で体重を減らしたら、運動してもよい」

    と言っています。

    筋トレや有酸素運動をすると「やった感」はありますが、それで消費するエネルギーや増える筋肉はわずかしかないので、辛ければ無理やり行う必要はありません。

    > 100:25

    これには、裏付けとなる研究がたくさんあり、一般向けの別の表現としては、

    「体重が 1kg 減るとき、体脂肪は 0.8kg 減る」
     (除脂肪体重は 0.2kg 減るので、0.8:0.2=100:25 になります)

    「9kcal 消費すると体脂肪(物質としての脂肪)が 1g 減る
     脂肪組織(脂肪細胞)1g には、体脂肪が 0.8g 含まれている(0.2g は水)ので、
     9 × 0.8 = 7.2kcal 消費すれば、脂肪組織が 1g 減る(それが体重減少。
     筋肉は少しも減っていません)」

    というものが知られています。

    実際、ダイエットに成功した患者さんの体重と体脂肪は、ほとんどこの割合で減っていくので、そのたびに科学研究の威力・有用性を感じています。

    > 100:0

    理論的には、「筋トレ」レベルでなく、本格的なボディビルディングを同時に行えば、筋肉量が増えた分で除脂肪体重の減少を0にすることは可能です。

    ただ、医学的には、除脂肪体重が減っていても、それは脂肪細胞に含まれる水が減っているだけで、筋肉は減っていませんから、お勧めすることはありません。むしろ、

    「運動して除脂肪体重を増やさなければ」

    と思っているうちに、蛋白質でカロリーを摂りすぎて、肝心の体脂肪が再度増加しかねないので、早く、

    「筋トレ+有酸素運動+食事制限」の三つ巴バランスが良い理想的なダイエット

    という誤った概念を頭から追い出してしまうことをお勧めします。

  10. そうすけ より:

    taijuuh先生、素早く的を射た回答ありがとうございました。
    最近のやりとりがないブログのように思えたので、ダメもとで質問してみましたが、予想以上の回答だったので感激しております。「適切なダイエットを行ったときに減る体脂肪と除脂肪体重の比は 100:25 であることが分かっています」ということですが、私のダイエットは、筋トレが殆どない有酸素運動(ウォーキングと軽いジョギング)と、軽い食事制限のみの緩いダイエットだったので、かなり筋力低下があると思い込んでいました。

    ハードな筋トレを一切していないので、緩んだお腹の皮が弛んで皴だらけになっていますし…※胴回りは100kg時122cmでしたが、62kgの現在は73cmと49cmも縮まりました。
    「筋トレ+有酸素運動+食事制限」の三つ巴バランスが良くない(偏りのある)ダイエットだと、体脂肪のみならず、除脂肪体重も必要以上に減ってしまうものだとばかり思いこんでいました。
    58歳ということもあり、実際筋力低下を日々痛感しておりますし、うまく片足立ちができません。椅子から立ち上がる際も両足を踏ん張らないとスッと立てない状況です。

    次にお聞きしたいことは、「筋トレ+有酸素運動+食事制限」の三つ巴バランスが良い理想的なダイエットだと、減る体脂肪と除脂肪体重の比は「100:0」に近くなる…ということはないのでしょうか?「100:25」という比が「適切なダイエット」なのは、ちょっと信じられません。

  11. taijuuh より:

    そうすけ さん

    適切なダイエットを行ったときに減る体脂肪と除脂肪体重の比は 100:25 であることが分かっています。
    この基準に当てはめると、今回のそうすけさんのダイエットは理想的なものと言えます。よかったです。

    まれに蛋白質が少なすぎる人で除脂肪体重の減少が25より大きくなる人がいますが、
    蛋白質を必要量以上に摂っている多くの人は(あまり運動しない人でも)これくらいの比率で体脂肪・除脂肪体重が減っています。

    ですから、この基準自体がよくできていると常々思っています。

  12. そうすけ より:

    taijuuh様、そうすけと申します。質問させてください。

    4.5年前の除脂肪体重は約60kg(体重100kg・体脂肪率40%時)でした。
    →現在の除脂肪体重は約52.7kg(体重62kg・体脂肪率15%時)…
    差し引き7.3kg減ということになります。

    体脂肪重量は40kgから9.3kgと30.7kg減ですが、
    除脂肪体重も60kgから52.7kgと7.3kg減だったことになります。
    30.7kg:7.3kg=4.2:1=100:23.8

    ダイエットで減る体重が全て体脂肪であれば理想的ですが、
    「筋肉・内臓・骨・血液」などの除脂肪体重(主に筋肉)も
    同様に減っているとしたらやはり問題ありのダイエットだったことになります。

    「100:23.8」という比率はどう評価される数字なのか?
    が知りたいのです。23.8は多いのか普通なのか?
    「100:15未満」程度であれば理想的な良いダイエットで、
    「100:30以上」だと筋肉を犠牲にした褒められないダイエット…
    というような何等かの基準はあるのでしょうか?

    何卒宜しくお願いします。

  13. taijuuh より:

    山本さん

    157cm、45kg、20% でしたら、筋肉量がほぼ足りている~わずかに少なめ、になると思います。もう少し蛋白質を摂った方が良いかもしれません。

    具体的には、毎日摂る食品の中に、今より多く大豆製品を組み入れるとよいのではないでしょうか。

    ちなみに、私の前のコメント中の

      「大豆製品の蛋白質は、そのカロリーが全カロリーの1/3位」

    というのは、納豆を例に挙げると次のようなことになります。

      100gの納豆は、全体のカロリーが200kcal、蛋白質が17g

    なので、蛋白質のカロリーは、

      17×4 = 68kcal

    これが、全体のカロリーに占める割合は、

      68÷200 = 0.34 つまり、ほぼ1/3。

    ゆで大豆や豆腐でも、同じように、

      「大豆製品の蛋白質は、そのカロリーが全カロリーの1/3位」

    というルールは成り立っています。

    麦や米など他の穀物では、蛋白質のカロリーが全カロリーの10%くらいですから、
    (亜麻仁やキヌアの比率はこれより少し高いですが、大豆には及ばないようです)

    それらを減らした分だけ大豆製品を摂るようにすれば、
    1日の総摂取カロリーを変えずに蛋白質をそれまでより多く摂ることができるようになります。
    (数字や計算がお好きならば、こんなページもあります)

    実行するときは、豆乳を増やしてもよいですし、昨今の日本食ブームで海外(コメントのIPアドレスから想像しました)でそれ以外の大豆製品を手に入れるのも、さほど難しくないと思います。

    そうして蛋白質が増えると数か月後には、体重が変わらずに筋肉量が増えて、体脂肪率が少し減るかもしれません。とはいっても、日本人女性なら、よくて体脂肪が2~3%減るくらいでしょうから、気にしない、のもありだと思います。

    ・・・

    カルシウムは骨密度を保つために必要です。
    (カルシウム摂取が少ないと血中カルシウムが下がってイライラしやすくなる、
     という説には根拠がありません。
     人間の体は、血中カルシウムが下がると骨のカルシウムを溶かして、
     血中カルシウムを正常に保つようにできているからです。
     ですから、カルシウムを摂る目的としては、骨のカルシウムを減らさないようにして、
     骨密度を下げないことを考えておけば十分です)

    とはいうものの、日本人は骨密度が低い割に骨折が少ないという調査結果も出ているので、あまり気にしないのも一つの手だと思います。

    気になるなら、菜食主義でもカルシウムを摂りやすい食品といえば、大豆製品や野菜ということになるし、

    > 行きがかり上ビーガン

    で、生乳で下痢を起こしやすいだけなら、
    前のコメントにも書いたように、ヨーグルトを試してみるのはどうでしょうか。

    また、骨密度を保つためには、蛋白質も大事なので、そのためにも大豆製品がよいかもしれません。

    このブログでは、大豆製品を含を含めた蛋白質の摂りすぎへの警告を多く書いているのですが、現代日本人の食生活は多様なので、個人に合わせた食習慣の注意が必要になります。

    そのことに配慮しながら書くと、読む方は、今まで自分が知っていた知識を追認するだけ
    (蛋白質の摂りすぎで体重が減らない人が「蛋白質は必要」と独りごちて蛋白質を減らさない)
    になることが多いので、難しいものだと感じています。

  14. 山本 より:

    迅速かつ明瞭なアドバイスをありがとうございます。大変参考になりました。これを機会に体脂肪率計を購入いたしました。体脂肪率は19.2%-20.2%の間で推移しています。食後30分か1時間以内に測っても22%を超えることはほとんどないです。オムロンの古い機種(手で測るタイプ)なので、どこまで正確かわかりませんが。

    ちなみに、毎日の食事で欠かさず摂取するようにしているものは以下の通りです。
     Flaxseed (亜麻仁「油」ではなく亜麻の粉末):大さじ2杯/日。
     ナッツ(クルミが主です):少々(掌のくぼみに収まる程度)/日。
     豆乳:コップ1-2杯/日。
     全粒粉食パン:薄切り3枚/日。

    豆乳はオーガニックのもので、カルシウムとかは強化されていないものを飲んでいます。なんとなくカルシウム摂取量が少なそうなので、栄養強化したものにしたほうがいいのかも知れません。(栄養強化食品ってなんか別のものもいろいろ入ってることが多いので避けがちなんですが)。なお、ほかの豆類や緑黄色野菜も結構たべています。米・玄米は炊くのが面倒なので、ほとんど食べなくなってしまいました。代わりにキヌアやサツマイモを少量、夕食時にとったりしています。

  15. taijuuh より:

    山本さん

    コメントありがとうございます。ご質問にお答えします。

    > 筋肉量 … 蛋白質の必要最低限

    植物性食品だけからでも蛋白質を必要量摂るのは、それほど難しいことではありません。
    米、麦、いも類、豆類などの穀物には、蛋白質のカロリーが全カロリーの1/10になるくらいに、蛋白質が含まれています。大豆製品の蛋白質は、そのカロリーが全カロリーの1/3位になり、しかも質が良い(学術的には「アミノ酸スコアが高い」)とされています。
    ですから、大豆製品を多めに摂れば、蛋白質を必要量摂って、筋肉量を減らさないことは十分可能だと思います。

    現在の食事で蛋白質が足りているかどうかは、体脂肪率を教えていただければ、筋肉量が推定できるので、もう少し確かなことがお話しできると思います。

    > 骨密度とかは大丈夫

    菜食主義者は骨密度が少ないという調査もあるようです。ただ、骨密度はカルシウム摂取量だけでなく、吸収率を高めるビタミンDや運動量の影響も受けますので、現在の適度な運動量とサプリメントの摂取は、骨密度を保つために有利に働くと思います。
    あと、乳製品でFood intoleranceとのことですが、単に乳糖不耐症によって生乳で下痢を起こすだけなら、ヨーグルトにすると大丈夫な場合もあります。

    > 痩せ型糖尿病の危険性はないのか

    身長と体重だけから肥満を判定して、基準値より少ないのに糖尿病が出るときに「痩せ型糖尿病」ということがあります。

    ところが、このような人たちは、体重の割に体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ肥満」であり、体脂肪を減らすと糖尿病が治ることが多いです。(体脂肪率が男性10%以上、女性20%以上なら標準体重以下でも体脂肪を減らして糖尿病が治るチャンスはあります)

    また、体脂肪率がかなり高くても、糖尿病になりやすい体質がなければ、糖尿病が発病することはありません。炭水化物の摂取が多いというだけなら、あまり心配しなくてよいと思います。 

  16. 山本 より:

    40代女性、ビーガン(純菜食)です。「主義」ではなく、加齢とともに肉・魚に箸がすすまなくなり、数年前からは卵と乳製品を摂るとFood intoleranceの症状がでるようになったので、行きがかり上ビーガンになってしまいました。
      ここ1年余、葉野菜・根野菜・種子豆類・全粒穀物・果物中心の食事で、いまのところ体調はすこぶる良く、1日3食、満足するまで食べて、体重は安定しています。(身長157cm、体重45kg)。運動はとくにしていません。毎日欠かさず30-40分ほどを通勤で歩くくらいです。
      ただ、更年期を迎えるにあたり、今後もこの食生活で筋肉量や骨密度とかは大丈夫なのか、はたして蛋白質の必要最低限をきちんと満たしているのか、痩せ型糖尿病の危険性はないのか等々、気がかりです。(なにせ炭水化物満載の食生活なので。) ちなみに、食事に加えて、ビタミンB12を毎日、ビタミンDを週2-3回サプリメントで摂っています。
      注意事項などありましたら、アドバイスいただければ幸いです。

  17. […] でなく、筋肉量・除脂肪体重を減らさないことが大事だという人は、  このブログにある別の記事を読んでもらうとよいのですが、  筋肉量を増やしたい人には役立つ記事がありません […]

  18. […] 次回は、筋肉・骨が減る条件(蛋白質摂取量や無酸素運動など)と、 体重や体脂肪量の測定方法や誤差について述べます。 […]


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