先日、医師や看護師にウソをついたことがあるという人が3割いた、
という調査結果が新聞の記事になっていました。
ウソの中では、生活習慣に関するものも12%あったとのことなので、
危険なので、ついてはいけないウソを、1つだけ、挙げておきましょう。それは、
糖尿病の薬(インスリン注射薬を含む)を使っている人が
食事の習慣を変えるときに主治医に黙っていることです。
食事を減らすことにより、低血糖発作が起こる危険があるからです。
低血糖発作で起こる症状は、動悸(心臓がどきどきする)、冷や汗、振るえ(手だけなく体全体が振るえるような感じがするという患者さんもいます)、の3つが有名です。
糖尿病の薬は食後に上がる血糖値を下げようとしています。
食事を減らして食後の血糖値が上がらないのに、
薬が効いてくると血糖値が下がります。
下がってくるとアドレナリンが出るので、私たちの先祖が
ライオンに突然出会ったときに起こるのと同じ反応が出るのです。
「うわっ」と思って、(本当に驚いたときは声にはなりません)
心臓がどきどきして、冷や汗が流れて、手が振るえてくる
という場面を一度想像しておくと、実際に起こったときに、
これは低血糖だ、
と気付いてもらえると思います。
自分がのんでいる薬が低血糖を起こしやすいのか、起こったらどうするのかは主治医またはかかりつけの薬局で確認してもらうとよいと思います。
このように、低血糖についての知識を得ることだけでなく、
始めから起こさないほうがよいので、
糖尿病の薬(インスリン注射薬を含む)を使っている人が
食事の習慣を変えるときには、あらかじめそのことを主治医に伝えてください。
さて、このような事態は、しばしば起こることではありません。
めったに起こらないので、実際には患者さんが言ったりしたりすることの方が正しいことが多いです。(この1週間暴飲暴食が続いたけど元気にしてるよ)
しかし、かりにその患者さんが糖尿病が治って薬が止められるようになるまで1度も低血糖発作を起こすことがなくても、
起こったときに重大な結果をもたらすので、正しい知識を持ったうえで、適切な予防手段を講じておかねばなりません。
同じことを見聞きしても、それを仕事にしている人とそうでない人では捉え方が違います。病気について言うと、患者さんより医師、医師の中でもその分野の専門家のほうが、危なかった症例を多く見ているので、同じことについての説明がおどろおどろしくなる傾向があります。
「そんなことをしていると命の保証はしない」
などというのも、長年不摂生を続けた患者さんが、心筋梗塞や脳卒中で生きるか死ぬかの目にあう、一生治らない後遺症を背負う、不幸な転帰に至るのを見てきているからです。
このブログのタイトルを見ていくと分かりますが、
「医学の進歩は、それまで原因だと思われていたことがそうでないと分かったことの積み重ねで成っている」
のように、守らなくても害のないことは言わないようにして、
狼医者(狼少年の話のもじりです)にならないことを心掛けている私が
「1つだけ挙げ」た注意ですから、どうぞ守ってください。
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