食事誘発性熱産生の体重への影響は無視してよい理由。このように効果が無い方法が唱えられるのは、生物学・医学が発達してきた経緯によるが、「どの食事の量を減らしても体に悪くないし効果がある」ことを理解すれば、体重を減らすのは簡単

食べた後に、基礎代謝(じっとしていても消費するカロリー)が増える現象があり、

  「食事誘発性熱産生」(「特異動的作用」という言葉も同じ意味です)

と呼ばれています。
この現象があるために、

  同じカロリーでも、3食抜かずに食べたほうが、消費カロリーが増えて体重が減る

といわれるのですが、果たしてその効果はどれだけあるのでしょう?一般に、食事誘発性熱産生は、その食品のエネルギーの5~10%と言われています。
1日2000kcal摂る人なら、3食で摂っても、食事誘発性熱産生は最大100~200kcalにしかならないということです。カロリーを600とか800kcalも減らさなくてはならない人には全く足りません。

もちろん、同じカロリーを2食で摂っても、食事誘発性熱産生が0ではありませんから、
2食だった人が3食で同じカロリーを摂ると、食事誘発性熱産生が増える
(または3食を2食にすると食事誘発性熱産生が減る)と主張したい研究者は、
その仮説が正しいことを実験で確かめねばなりません。

といっても、簡単に行える実験ですから、もし確かな増加量があるなら、
何人かの研究者(グループ)から、およそ何%増えるといった数字が出て、
私たちにも伝わっているはずです。

ところが、実際には、その数字を聞いたことがありません。
そこから考えられるのは、

  実験を行っても差は出なかった、だから研究として発表されていない、

ということです。
これなら、

  朝食を食べるようにしてから体重が増えた、
  (朝食後に飲む血圧の薬のために朝食を食べ始めたときに多い)

という人が多いことに納得できます。

食事誘発性熱産生について調べていくと、最近の研究で、

  朝型の生活リズムにした方が、夜型よりも食事誘発性熱産生が多くなる

というものがありました。
その論文の内容から、朝型と夜型での差を計算すると、14kcalで、
消費カロリーの1%くらいでした。
(これくらいの値なら、誤差範囲で、真の差が全くない可能性もあります)

これを応用すると、体重が80kgで夜遅く食べている人が、早い時刻に食べるようにすると、0.8kg体重が減ることになりますが、
思ったよりもかなり少ない減少量と思った人が多いでしょう。

しかし、このわずかな差が、夕食を早い時刻に食べることを進める根拠の1つとされています。
これは、実行する困難と比べると効果が少なすぎるというだけでなく、
今の仕事をやめない限り無理、と言って体重を減らそうという始めから意欲をなくさせてしまうという点で、大いに問題があります。

では、研究者たちは、このように、わずかな差にもかかわらず、大きな影響が出るように思うのでしょうか。
それには、2つの原因があります。

1つ目の原因は、

生物学の分野では、わずかな差で大きな影響が出ることが多く解明されてきたからです。
良く知られている例としては、次のようなものがあります。

  血糖値を下げるインスリンというホルモンは、
  1μgで50mgくらい(5万倍)のブドウ糖を細胞に取り込ませて、
  血液中から取り除く働きがあります

  多くの薬は、mg(千分の1g)という単位で、
  数十kgの人間の体の熱を下げたり、病気を治したりします

  公害による環境汚染は、ppm(100万分の1)の濃度の有害物質が、
 人間の体に深刻な影響を及ぼしていました

このように、生物の体を維持するためには、
それ自体は少ない量で他の物質や機能に大きな影響を与える物質の存在が欠かせないし、
一方では、その機構によって、深刻な影響をこうむることがあるので、
調べた結果、差がわずかでも発表しておこうということになるのです。

しかし、食事誘発性熱産生は消費エネルギーの一部で、
消費エネルギーが1%増えても、体重は1%しか減りません

ですから、生活リズム(たぶん食事の回数は関係ない)を変える費用・ストレスに比べて体重を減らす効果が小さ過ぎるため、早晩忘れらると思います。

2つ目の原因は、
2つの物事の間に相関関係があるだけで報告することが許されているので、
どちらが原因でどちらが結果であるかという因果関係を
厳密に吟味しない土壌があるうえに、

動作を起こしていると原因だと、状態を表していると結果だと誤解されやすいことです。
順に説明しましょう。

相関関係があるというのは、

  たくさん食べる人の方が体重が重い

のように、

○○な人には、XXが多い、という関係があることを言います。

しかし、これは直ちに○○が原因でXXが結果であるということにはなりません。
例えば、

  ダイエット飲料を飲んでいる人の方が体重が重い

という調査結果がありますが、これは

  ダイエット飲料を飲むと(それが原因で)体重が増える(という結果になる)

因果関係を表しているのではありません。正しい解釈は、

  体重が重いとダイエット飲料を飲む

人がいるから、

  ダイエット飲料を飲んでいる人と飲んでいない人を比べると
  飲んでいる人の方が体重が重い

という関係が出るだけなのです。

そして、この誤りが起こりやすい原因として、

  「~する」という動作は原因と思われやすく、
  「~である」という状態は結果と思われやすい

ことがあります。

ダイエット飲料と体重の例では、ダイエット飲料は飲むという「動作」を、
体重は、体重計で図ったその人の「状態」を思い起こさせ、
それぞれ、原因と結果であると誤り易い、というわけです。

このような状況から、(因果関係があまり吟味されずに)

  食事誘発性熱産生のわずかな差でも、体重を大きく減らす可能性がある

と誤解されたと考えています。

・・・
これらの経緯から、

  たくさん食べても(魔法のように「一発で」)体重を減らす方法

が求められ続けてきて、いまだにそれは続いています。しかし、

  糖質(炭水化物)制限、
  カロリーの低い物を先に食べる、
  体重を減らすというサプリメントや薬

には、どれもそれだけの効果はありません。

同じ状況は、コンピュータのソフトウェアの世界にも見られます。
増大する需要に対応してソフトウェアの生産性を上げる
「銀の弾丸(魔法のようにすぐ役立つ解決法)などない」
というのは、20~30年前から言われていて、結局、現在までその状況は続いています。

しかし、幸いなことに、ダイエットの問題の方は、解決する方法があります。
それは、

  たくさん食べても体重を減らす方法

という「銀の弾丸」ではありませんが、少し考えると当然の、

  どの食事の量を減らしても体に悪くないし、効果がある

ことを理解して、必要なだけ食事の量を減らすことです。

コメント / トラックバック1件

  1. […] つまり、 「脂肪の合成を調節するしくみは、○○が司っている」 といった単純なものではないということです。 ○○を捕えなくても、 食べる量さえ減らせば、カロリーが減って体重は減るのです。 (○○のような悪辣な犯人や、それを倒す「銀の弾丸」は初めから存在しません) […]


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