お腹が空いたときにどうするか?
という問いに、いきなり答えから始めますが、
別に何もしない、が正解です。
少なくとも、何もする必要はありません。
その証拠としては、お腹が空いて倒れそうだったという人はいても、
空腹のあまり倒れてしまった(意識がなくなった)と言う人は
今まで「診」たことがないということをあげておきます。
(糖尿病の患者さんで薬を使っている人以外は)
皆さんも、目の前で人が倒れたときに、脳卒中か心臓発作かと思って、
心臓マッサージやAEDのことを考えることはあっても、
お腹が空いていたのだから何か食べさせてあげなくちゃ、とは思わないでしょう。
朝食抜きでも、意識がなくなり交通事故が起こったという話も聞いたことがありません。
にもかかわらず、炭水化物(糖質:ブドウ糖の原料)を摂らないと、
・ ブドウ糖が不足して脳の働きが悪くなる、
・ 子どもが朝礼で倒れる、
という話が広く信じられています。
そう主張する人たちの言い分は次のようなものです。
・ 人間は脂肪からブドウ糖を作ることはできない。(これは正しい)
・ 人間の体にブドウ糖の原料として貯えられているものとしては
肝臓のグリコーゲンがある(これも正しい)
・ しかし、そのグリコーゲンは何も食べないでいると、
12時間位で尽きてしまう。(これも正しい)
・ それに筋肉に貯えられたグリコーゲンは筋肉自体が使ってしまうので、
脳のブドウ糖の供給源にはならない(これも正しい)
・ だから、ブドウ糖不足に陥る前に、食事からブドウ糖の原料、
すなわち炭水化物を摂らなければならない(これは誤りです)。
なぜ誤りかというと、グリコーゲンがなくなっても、
からです。
元々人間の体を作っている蛋白質(体蛋白)は、
1日当たりその2.5%が、細胞が壊れたりするときにアミノ酸に分解され、
そのアミノ酸のうちの80%(体蛋白の2%)細胞が
新たに分裂するときなどに再利用されます。
残り(体蛋白の0.5%)のアミノ酸がブドウ糖や脂肪の原料になって
エネルギーとして利用されます。
ですから、ブドウ糖や脂肪の原料になるアミノ酸の分すなわち、
1日当たり体蛋白の0.5%の蛋白質を、食事から摂る必要があります。
(でないと、筋肉などの除脂肪体重、体蛋白が減っていくからです)
また、これが「蛋白質の必要量は体重1kg当たり1gである」という意味です。
(体蛋白の量は体重の2割くらいなので、興味がある人は計算してみてください)
このようにして、もともと蛋白質が分解されたアミノ酸を原料にして、
ブドウ糖を作ることができるので、
(糖尿病の薬を使っている人以外は)低血糖状態になることはありません。
人間の体のこの働きには「糖新生」という名前がついていて、
医学部の生化学では必ず(たぶん栄養学の過程などでも)
習っているくらいには、確かな知識です。
以上のことから、
・ 肝臓のグリコーゲンが尽きるから、脳のブドウ糖が不足する
というのは誤りで、
- 肝臓のグリコーゲンが尽きても、
体蛋白を原料にしてブドウ糖が作られるので、
脳のブドウ糖は不足しない
というのが正しい知識です。
では、この誤った知識を唱え始めた人
(誰かは知りません。
ただ、そのために生活習慣病の患者さんが増えたことが、
医師の仕事が過酷になった原因の1つだとは思っています)
は、なぜ、そう思い込んだのでしょうか。
1つは、蛋白質からブドウ糖ができるということが、かなり思い付きにくい、
ことによると思います。
人間の体は、脂肪を除くとほとんど蛋白質でできています。
・ 人間の体のように形があるものはそれを作る材料、
すなわち蛋白質がなくてはならない
・ 一方、その体を動かすエネルギーとしては、炭水化物や脂肪が使われる
という考えは、構造と機能の役割に、
それぞれ蛋白質と、炭水化物・脂肪を割り当てているので、
単純で分かりやすい捉え方です。
もう1つは、機械や自動車など、動くものには全て燃料(エネルギー)が
必要だからです。
・ 人間も動くから、エネルギーが必要、
特に脳にはブドウ糖がないと大変なことに・・
ということではなかったかと思います。
この人間の体を機械になぞらえる、というのも分かりやすい捉え方ではあります。
生活習慣病の患者さんが増えるというように、
私たち皆がつらい目に合うことがあります。
今や、蛋白質はブドウ糖になってエネルギーとしても使われる、
すなわち、構造だけでなく機能をも担う、という捉え方に変えなければなりません。
私自身も、本(「メタボ氏のための体重方程式」 このブログの右の欄に表示)
を書くためにいろいろ調べるまでは、
蛋白質の働きは、と聞かれると、筋肉や内臓など体を作ること、と答えていました。
調べてみて、
- 体の蛋白質が、1日で2.5%も作り替えられている、
そして、ブドウ糖の原料になる、
ということを知ったときには、
人間は、盛んに活動している「生き物」なのだと分かり、感慨深いものがありました。
というわけですので、
何も食べていなくてお腹が空いても、別に倒れることはありません
から、心配要りません。
今まで、お腹が空くと苦痛だったのは、
それが失神や命の危険に結びつくのではないかという恐怖によって、
(これ以上食事を減らすと体が持たない!)
つらさが増幅されていた部分があると思います。
お腹が空いても何も起こらないということがわかると、
それだけでつらさが軽くなるだろうと思って今回の話をしました。
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