今回は、
体重を減らすために夕食を減らさなくてもいい、
朝食でも昼食でも減らせばその分だけ体重が減る、
という話をします。
今までにも、何度かこの話をしていますが、
(「減らしやすい食事・その2、は元気な時間帯の食事」など)
間違えていた人は、こう思っていたから間違えたのだろう、
ということに確信が持てたので、
今までに書いた分より説得力がある文章が書けると思います。
生活習慣病の患者さんに、体重を減らすために食事の量(カロリー)を減らしてくださいと言うと、つらそうな顔をする人が多いです。そこで、
私「夕食でなくて、朝食や昼食を減らしてもいいです」
と言うと、不審そうに、
患者さん「夕食を減らさないといけないんでしょう」
私「朝食や昼食を減らしても体重は減らないと思いますか?」
患者さん「ううん(と、問いには答えず)、
だって夕食のあとはカロリーを使わないから、たくさん食べると太るって…」
私「夕食の後はカロリーを使わないのですか?」
患者さん「あまり動かないからカロリーは使っていないと思います」
・・・
確信が持てたところというのは、ここです。
「あまり動かないからカロリーは使っていない…」
患者さんとの会話に戻ります。
・・・
私「では、体を動かすとカロリーを使うのですね」
患者さん「そうだと思います。運動した後に体重を測ると減っていますから」
私「測ったことがあるのですね。
では、そのうち脂肪が燃えた分はどれくらいだと思いますか?」
患者さん「脂肪が燃えていたのではないのですか?」
私「燃えていた部分もありますが、体重75kgの人が30分歩いて体重が300g
(0.3kg)減っていても、そのうち脂肪が燃えて減った分は、20gくらいです」
患者さん「たったそれだけですか。あと減った分は何が減ったのでしょう」
私「汗などの水分です。汗をかかなくても、人間の体からは『不感蒸泄』
(用語を覚える必要はありません。
ただ、用語があるくらいには医学的な常識です)
といって水分が蒸発していくのです」
(ちょうど飲料のテレビCMでやっています)
患者さん「では、食べたあと体重が増えても運動すれば消費できる、というのは?」
私「(大食いでなくて)普通に食べたあとでも、
体重が1kg増えていることはよくあります。
そのあと90分歩いて体重が(1kg減って)元に戻っても、
摂取したカロリーは1000kcal、消費したカロリーは420kcal。
残念ですが、体脂肪に換算すると差し引き80g増えていることになります。
摂ったカロリーを全部消費するには、
さらにあと2時間、全部で3.5時間歩かなくてはなりません」
患者さん「体重が戻っても、体脂肪は増えているのですね。ううん。
(しばらく考えて) だとすると、
食べたカロリーを使えるほど体を動かしているとは思えない。
この話どこかおかしくありませんか?」
私「どこがおかしいのでしょう」
患者さん「だって、90分歩いて420kcalでしょう。
成人男子の消費カロリーは平均2200kcalだと聞いたことがあります。
だとすると、1日に平均7時間歩いていることになります。
いかに、このごろ健康志向だからといって、
そんなに歩いている人がいるとは思えない」
私「確かに、それだけ歩いている人はあまりいないでしょう。
ですが、それだけ歩かなくても1日2200kcalは使っているのです」
患者さん「体を動かさなくても、カロリーを使っている?
自動車だったら動かなければガソリン(エネルギー)は使わないのに」
私「人間と車とは違います。
人間はじっとしていても大量にカロリーを使っているのです」
患者さん「摂り過ぎたカロリーは運動で消費するしかない、
と思っていましたが、じっとしてもカロリーは使うのですか?」
私「はい。じっとしていても使うカロリーを基礎代謝といいます。
現代の都会人なら、これが1日の消費カロリーの7~8割を占めます」
患者さん「眠っていてもカロリーを使う?」
私「はい。体温調節と、心臓を動かすのと、
それから眠っていても脳は大量のブドウ糖を消費しています」
・・・
これが言いたかったことです。
「じっとしていても、眠っている間でも大量のカロリーを消費している」
のですから、夕食で摂った大量のカロリーでも、多くがじっとしているときの基礎代謝で(運動で使われるのは2~3割ですから)、1日かけて消費されています。
さらに、このことで、夕食を夜遅く摂ると太る、というのも誤りだと分かります。
もちろん、夕食の後もカロリーが大量に使われている、というのも理由ですが、
遅くなった夕食を食べる前に、
じっとしていても基礎代謝で大量のカロリーが使われているからです
(4時間遅れると、食べる前に消費される基礎代謝は、
1時間歩いて使う消費カロリーくらいになります)。
遅く食べるように習慣が変わっても、
今まで食事のあとで使われていたカロリーが
食事の前に使われるようになるだけなので、
それだけで体重が増えることはありません。
では、今回の最後の会話です。
・・・
その分体重が増えるという話も聞いたことがあるのですが」
私「寝ている間でも、起きている間でも、人間の小腸は非常に性能が良く、
栄養にできるものはほぼ100%に近く吸収できます。
小腸の表面積を合わせるとテニスコート1枚分になる
という話を聞いたことはありませんか?
その表面積に接している間にカロリーになる栄養素
(蛋白質、糖質、脂質)はほとんどすべて吸収されているのです。
ですから夜間の吸収率が昼間より高いということはありません」
患者さん「分かりました。夕食の時間が遅い人のほうが
体重が重いという話も聞いたことがあります」
私「そういう調査結果も確かにあります。
おそらく夕食時間が遅いので、それまでに間食をする人がいるから
そういう結果が出たのだと思います。
一般に、統計でそういう結果が出ても、
その通りの条件で実験をしたときには再現できない
ということがよくあります。
相関関係があっても因果関係はないと言います」
患者さん「間違えるパターンを表す言葉もあるのですね。
リンク先を見ておきます」
・・・
今回は長くなりましたが、
「体重を減らすときには、夕食を減らさなければならない」という誤りと、
「体重を減らすときには、夕食を早い時間に摂らなければならない」という誤り、
が、どちらも、
基礎代謝が大きいことを理解していないことから生じた、
ということに確信を持って書きました。
また、
「寝ている間はエネルギーを使っていないから、食事を減らしてよい」
という誤った認識は、
「起きている間はエネルギーが必要だから、朝食が必要で、空腹を放置すると体に悪い」
というこれも誤った認識と表裏一体だと思います。
という正しい認識については、それぞれのリンク先を読んでください。
納得できた人、できなかった人とも、何かご意見を頂ければお答えします。
(BMAL1が脂肪を貯め込むという話については、下のコメントを見てください)
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意見 さん
BMAL1の働きが体重に影響を及ぼすという考えは誤りで、
ダイエットの役に立つどころか、むしろ害を及ぼしています。(根拠はこちら)
ですから、
> 22時以降に夕食を食べ
ても何の問題もありません。
あまり詳しくはありませんが、BMAL1のことをかんがえると22時以降(できれば20時以降)に夕食を食べない方が良いのではないですか?
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