新たに発見されたしくみが、役に立つと分かるまでに越えなければならない関門・その2 (実験・調査に再現性はあるか?)

問い2:
同じ食事(カロリーも同じになります)を、2つのグループの人たちに、
摂る時間帯を変えて摂ってもらうという調査をしたところ、
遅い時間に摂るグループより、早い時間帯に摂るグループのほうが、
体重が少なかったとします。
前回の「体全体で」という条件は満たしています)

この結果を根拠にして、早い時間帯に食事を摂るほうが、体重が増えにくい
と言っていいのでしょうか?

答え2:

法則性が「ない」はずなのに、「ある」という調査結果が出ることが、20回から100回に1回(5~1%)ある。だから、「体重が増えにくい」と言うためには、何回も同じ結果になるという再現性が必要、
というのが正解です。

ある仮説(法則の候補)を確かめる調査で、意味がない(法則としては落選)のに、偶然意味があるという調査結果が出る場合があります。
調査が正しく(調査方法の誤りやねつ造なしに)行われていても、意味のない仮説に5%~1%(20回~100回に1回)はその仮説は正しい、という結果が出るのです。

別の言い方をすると、全く関係ないA(架空の例:頭痛薬を飲んだ)という出来事と
B(例:糖尿病が治った)という出来事を調べると、
19人の研究者が行った調査では、当然、関係がない(例:効果はない)、
という結果が出るのだが、
1人が行った調査では、関係がある、という結果が出てしまいます。

このとき、AとBの間に関係がない、つまり、法則性が存在しない、
という結果は科学論文になりにくいので、
論文として発表するのは、意味があると出た1人のほうだということになります。

例として挙げた、薬の効き目を調べる調査では、薬を出す医師がどのような薬か知っていると、患者さんが感じる効き目にも違いが出てくることがあるので、医師にも知らせないようにして行います。(二重盲検法といいます)。

そうでない研究では、研究者自身が、調査結果がこうなるはずだ、ということを知っているので、(法則性がある、という方へ)結果に偏りが出ることはむしろ当然かもしれません。

このようにして、法則ではないものも(科学的に正当な)論文として発表されることがあるので、調査が正しく行われていることも含めて、
本当に意味がある仮説だ(法則性がある)というためには、
何度調査をしても同じ結果になるという、「再現性」が必要です。

さて、ダイエット(食事療法)の分野で、この「再現性」を満たしていない研究はあるか? 
というと、この回の初めに書いた

「同じカロリーでも早い時刻に食べると体重が少なくなる」

というのが怪しい

もちろん、「再現性」を満たしている研究は(極めて)多数あります。
しかし、その割には、生活習慣病が治る人は少ない、なぜ?
という疑問については、次回解説します。

コメント / トラックバック3件

  1. […] 日本中でこのようなことが行われているはずですが、 その原因として、禁酒や運動など、 実行しても効果がないことや守らなくても害のないこと (つまり必要のないこと。その理由: 目的の重大さと手段の容易さ(脳卒中・心筋梗塞の予防に、つらいことは必要ないこと)・・・、 従来言われてきた方法を実行しても効果がない原因、 新たに発見されたしくみが役に立つと分かるまでに越えなければならない関門・その1、その2、その3、) が言われ続けてきたことが大きいです。 […]

  2. […]   越えなければならない関門・その1、その2、その3。 […]

  3. […] という結果になったとします。(前回の「再現性」という条件は […]


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