蛋白質はブドウ糖の原料、蛋白質には炭水化物(糖質)と同じカロリーがある、という正しい知識があると、ダイエット・食事療法がとても簡単になる・その1

蛋白質には、

  ・ 蛋白質は、筋肉や血液など、体を作る栄養素

という小学校の家庭科で習った以外の働きがあります。
とはいっても、それは

  蛋白質はブドウ糖の原料になる

  蛋白質1gには炭水化物1gと同じカロリーがある

というだけで、このブログでは何度も書いてきたことです。
(このページ右上の検索欄で「蛋白質」と入力すると出てきます)

ただ、ダイエット・食事療法がうまくいかないのは、
ほとんどが、このことが分かっていないことが原因です。

この重要性に比べて、今までしてきた説明は、簡単なのはよいとしても、
深く理解するためには物足りなかったようです。

今回は、食事で摂取した蛋白質と体を作っている蛋白質が、
どのように代謝、すなわち分解・合成・排泄されているか
特に、数量的なところに注目して(とはいっても簡単な掛け算だけです)
図を描いたので、ぜひ読んで欲しいと思います。

説明は、図を見ながら、面倒がらずにゆっくり読み進めて理解してください。
理解できると、ダイエットが確実で簡単に行えるようになります。

クリックすると別ウィンドウで開きます

             図.蛋白質、アミノ酸の代謝
(図をクリックすると別ウィンドウで開きます。見比べながら説明を読んでください)

1.体を作っている水、脂肪以外の物質で最も量が多いのは蛋白質です。
  体中の蛋白質を全て合わせて、体蛋白といいます。
  その重さは体重の20%あるので、体重が60kgの人なら
  (60×0.2=)12kgくらいになります。

2.体の細胞の数は、細胞が分裂してその数が増える一方で、
  細胞が壊れてその数が減ることによって、一定に保たれています。
  (これらの動きは、胃腸の粘膜や白血球で特に盛んに行われています)

  細胞が分裂するときには、細胞を作るための蛋白質がアミノ酸を
  原料にして合成されます
(これを蛋白同化ともいいます)。

3.また、細胞が壊れるときには、細胞を作っていた蛋白質はアミノ酸に
  分解されます

4.このように体の細胞を作っている蛋白質(体蛋白)も、
  細胞が増えたり壊れたりするときに、合成されては分解される
  ことによって、その量を一定に保っています。

  1日に合成される体蛋白の量(2.)は、分解される体蛋白の量(3.)
  と等しく、体蛋白の2~3%になります。
  ですから、体蛋白が12kgの人では1日に300gくらいが分解されては
  合成し直されていることになります。
  (細胞の分裂・破壊時以外に合成・分解される蛋白質もありますが、
  同じように考えると、体蛋白の量は一定になることがわかります)

5.食事で摂取した蛋白質は、胃や腸でアミノ酸に分解(消化)されて
  から吸収されます

6.体蛋白が分解されてできたアミノ酸と食物の蛋白質が分解されて
  できたアミノ酸は、その一部がさらに分解されて、ブドウ糖や脂肪の
  原料と、アミノ基という物質ができます。
  アミノ酸を原料にしてブドウ糖が作られることを糖新生といいます。

7.体蛋白がアミノ酸を経てブドウ糖や脂肪に分解される量(6.)は、
  1日に体重1kg当たり1gで、体重が60kgの人なら60gくらいです。
  これは、食事で摂取した蛋白質から吸収されるアミノ酸(5.)で補充されます。

8.アミノ酸が分解されてできたブドウ糖や脂肪は、食事から摂られた
  ブドウ糖や脂肪とまったく同じように、エネルギー(カロリー)として
  消費(分解)されて、水、二酸化炭素になります。

9.アミノ酸が分解されてできたブドウ糖や脂肪のうち、消費されずに
  余った分は体脂肪として貯えられます

10.アミノ酸が分解されたできたアミノ基は、尿素という物質に変えられて
  尿から排泄されます。

以上の代謝経路のうちで、最も知られていないのは、

6.「アミノ酸の分解によって、ブドウ糖や脂肪ができる(糖新生)」
というところです。

「アミノ酸が分解されるときにアミノ基ができて尿から排泄される」

というところに気を取られて、
同時にできたブドウ糖や脂肪にカロリーがあることが忘れられているのです。

一度ブドウ糖や脂肪ができると、それが直接食物から吸収されたものなのか、
元は蛋白質でアミノ酸を経てできたブドウ糖や脂肪なのかを、
体(細胞)は見分けることができません(カロリーには色がない)。

ですから、摂り過ぎて消費しきれなかったときには、
9.体脂肪になって貯えられてしまうのです。

以上の話で、

「蛋白質1gにはブドウ糖・炭水化物1gと同じ4kcalのカロリーがある」
(これは正しい)

ということを聞いたことがある人は、その意味がはっきりしたと思います。

次回は、蛋白質の摂取量が、必要量(体重1㎏当たり1g)を下回っていたときや、
上回っていたときにどうなるかを詳しく説明していきます。

コメント / トラックバック13件

  1. […] 人間の体は蛋白質を原料にしてブドウ糖が作れる、 ということは、医学部で生化学(医化学)で「糖新生」として習います。 […]

  2. […] ただ、それまでに学んだ知識が妨げになったり、 この記事に視覚的な図がなかったりすることで、分かりにくかった人は、 大事なところなので、以前の記事(1、2、3)も合わせて読んでください。 […]

  3. […] として貯えられることになります。(え???と思った人は […]

  4. […] 筋肉には蛋白質が多く含まれていますから、 もし増やすことが […]

  5. […] 蛋白質はブドウ糖の原料…その1、2、3、4 […]

  6. taijuuh より:

    みちもとさん

    「30代まで…蛋白質摂取不足の人がいる」から、
    最も大事なところを気を付けていらっしゃったのですね。
    普段見ている患者さんには40代、50代の人が多いもので、失礼しました。

    > またご報告します。
    ぜひ。お待ちしています。

  7. みちもと より:

    taijuuhさん
    ご回答ありがとうございます。

    まず、自分が蛋白質不足でない事が分かり安心しました。

    >蛋白質摂取が実際に足りない人より、それを恐れて思うように体重が減らない人のほうが多いです。

    確かに、ちょっと「不足」の方を恐れすぎているのかも知れません。

    ただ、私の場合、20代独身ということもあり
     ・カロリー表示のある既製品を食べる場合が多い
     ・毎日のカロリー計算が苦痛ではない

    という理由で、現在はカロリー計算を主体に行っています

    逆に
     ・パン等、単品のみの食事が多い

    という理由から、カロリーより蛋白質不足の方が気になっているのです。

    最近、蛋白質不足ばかり気にしすぎるのもどうかと思い
    プロテインを飲み始めました
    もちろんプロテインのカロリーは考慮しています。

    確かに、カロリー計算には
     ・個人ごとに基礎代謝量が異なる
    という問題点があるのでしょうが

    1.大体同じようなカロリー摂取と生活強度で生活する
    2.ある体重にて安定する時が来る
    3.摂取カロリー=消費カロリーとなっているので
      現在から減らしたい体重の割合に合わせて
      カロリーを減らす
      50kg 1600kcalで安定し、45kgまで減らしたいなら
      45/50×1600 = 1440kcalを目安にすればいい

    という考え方で解決できると思っています。

    ということで
     ・既製品が多い
     ・単品のみで食事を済ましてしまう場合が多い
     ・カロリー計算が苦痛ではない

    という条件を満たしている場合
     ・プロテインの摂取
     ・(プロテインを含めた)毎日のカロリー管理
      ⇒停滞後、目標体重に合わせた修正

    という方法もありなのではないかと思っています
    現在この方法で成果が出ておりますので
    目標に達したらまたご報告します。

    ご教示ありがとうございました。

  8. taijuuh より:

    みちもとさん
    コメントありがとうございます。

    > 「アミノ酸」とは、血液検査の「血中総蛋白」と同じような意味

    大筋としては正しいですが、
    血中総蛋白は、図の中の[体蛋白]に含まれます。

    5.摂取した蛋白質 が少ないと、
    2.合成(タンパク同化) されてできる
    [体蛋白]が減る。
    その[体蛋白]に含まれる血中総蛋白も骨格筋も減ってくるというわけです。

    > 「栄養」という曖昧なものではなく、蛋白質不足を指す
    > 「血中総蛋白」…必要蛋白質が確保できているかどうかの確認になる

    どちらも正しいです。
    ただし、(調べたと思いますが)
    総蛋白が8.5以上のようにかなり高いときには、
    蛋白質摂取とは関係のない稀な病気のことがあります。

    あと、前回のコメントでも述べたように、
    蛋白質摂取が実際に足りない人より、それを恐れて思うように体重が減らない人のほうが多いです。
    特に、40代、50代の人には多いように感じます。
    (反対に、30代までと、60代以上の人には、たまに蛋白質摂取不足の人がいます)

  9. みちもと より:

    taijuuhさん

    お久しぶりです、みちもとです。また質問させていただきます。

    タンパク質代謝の図の中にある「アミノ酸」とは、血液検査の
    「血中総蛋白」と同じような意味だと思ってよいのでしょうか?
    (蛋白質が分解されたものがアミノ酸だというのは理解しています。)

    何が言いたいかというと、先日健康診断があり、その結果の中に「血中総蛋白」という項目がありました。
    私は7.5と、正常値・高めといった値でした。

    調べてみると、血中総蛋白が低いと「低栄養状態」の可能性があるようで
    実際には「栄養」という曖昧なものではなく、蛋白質不足を指すのではないかと思っています。

    つまり、血液検査の「血中総蛋白」を確認することで、食事を減らしても
    必要蛋白質が確保できているかどうかの確認になると思ったのですが
    この考え方は正しいでしょうか?

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