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体重が減らないのは、飢えへの恐怖が、容易で有効な手段を阻んでいることが原因

体重が減らない原因は、誤った知識で十分にカロリーが減らせていないからです。
その誤った知識の背景には、食事を減らすことや体重が減ることへの恐怖があります。

今回は、その恐怖から自由になり、体重を思いどおりに減らせることを目指して、
誤った知識(1~7)を、それが生じて来た恐怖の種類(1~3)に分けて述べます。

恐怖1.食事を減らすと起こる(現実にはない)弊害を恐れる

食事から摂る栄養・カロリーを減らすと体に害がある、
と思うと、おっかなびっくりになり、十分に食事の量・カロリーを減らせなくなります。
あるいは、せっかく減らしても、お腹が空いたことを口実に余分に食べてしまいます。
お腹が空いても、実際には、カロリーを余分に消費したわけではないので、
食べた分はすべて、体重を増やす原因になります。

【誤った知識1】
糖質(炭水化物)を取らないでいると、血糖値が下がり、お腹が空いて、
脳の働きが悪くなる。その状態で何も食べないでいると、
脳が活動できなくなって失神する

【ここが誤り1】
人間には、糖質を全く取らなくても、食事中の蛋白質や、体を作っている蛋白質(体蛋白:その多くは筋肉に含まれる)からブドウ糖をいくらでも作れるしくみがあります。
そのしくみを使って、長時間(長期間)食事をしなくても、血糖値が下がって脳の働きが悪くなったり、失神したりといった危険なことが起こらないようになっています。

空腹感がなぜ起こるのか、そのしくみは、まだ解明されていません。
(「摂食 血糖」などでウェブ検索してみてください)
ただ、「血糖値が下がると空腹感が起こる」のでないことは明らかです。
なぜなら、今述べたように、人間の体は、体蛋白からブドウ糖を作って血糖値を維持するようにできているからです。実際、空腹を感じた時に測っても、血糖値は正常 [1]です。

ですから、お腹が空いたときに甘いものなどを食べなければならない、
というのは誤った知識です。

【誤った知識2】
蛋白質は、筋肉や血液を作る原料だし、
その他にも大切な働きをしているから、多く取っても大丈夫

【ここが誤り2】
血糖値を維持するために使われた、筋肉などに含まれる体蛋白は、
次の食事で摂った蛋白質で補充されますから、体蛋白の量は元に戻ります [2]
もし、摂った蛋白質が必要量より少なければ、
筋肉などの体蛋白が減って体に良くありません [3]
しかし、

  蛋白質の必要量は、目標体重で計算すること、
  蛋白質は、穀物(いわゆる炭水化物)にも含まれていること

により、必要量:実際に摂らなければならない肉や魚などの量は、そう多くない [4]ので
その量まで減らしても害はありません。

蛋白質を必要量以上に摂ったとき、体は余った蛋白質を、
1.で書いたように、ブドウ糖にしてカロリーとして消費しようとします。
しかし、糖質や脂質で摂ったカロリーも多くて、消費しきれないときは、
さらに脂肪に作り変えられ、(ブドウ糖を経ないで直接脂肪になることもあります)
体脂肪として貯えます [5]
もし、

  無酸素運動を始めた、
  男性である、
  筋肉が増えやすい体質である、

という条件が満たされれば、筋肉の量が増える [5]ので、その原料として余分に摂っていた蛋白質が使われることがあります。
ただ、現実には稀ですし、それらの条件がすべて揃って、
「筋肉が増えることで基礎代謝が増え体重が減る」
ことはほとんどありません。(その理由 [6]

結局、余分に摂った蛋白質は、肥満の原因なので、その分を減らしても弊害は起こらずに体重が減ることになります。

【誤った知識3】
食事のカロリー計算をするときに摂る「1日に必要なカロリー」は、
人間が活動するために必要なカロリーだから、これ以下に減らしてはいけない

【ここが誤り3】
ダイエット・食事療法でカロリー計算をしていても、体重が全く減らなかったり、
ひどいときには、増えたりすることがあります。
その原因は、

  「必要なカロリー」だから、つい摂り過ぎてしまう、
  暴飲暴食や間食のカロリーを計算していない、

というだけではありません。

1日にカロリーをどれだけ摂るかという「必要カロリー」は、

  目標体重、
  体重1kg当たりの基礎代謝(じっとしていても消費するカロリー)、
  日常生活の活動性(基礎代謝を1として消費カロリーがその何倍になるか)

を掛け合わせて推定した、目標体重になった時の消費カロリー [7]のことです。

この中で、体重当たりの基礎代謝は、人によって個性が大きく、
平均より2割くらい少ない人もいます。その場合は、
目標体重を今の1割減にしようと思って計算した「必要カロリー」が、
それまで摂っていた食事のカロリーよりも多くなり、
当然、体重が増えてしまいます。

これを防ぐためには、
「摂取すべきカロリー」を求めるのではなく、
今の食事から減らすカロリー [8]
を求める方法が有効です。

また、「今の食事から減らすカロリー [9]」にすると、
いちいち食品の重さを計ってカロリー計算をせずに、大まかに食事の量を減らす [10]だけで、
確実に体重が減ることがあります。

というのは、生活環境・リズムに合わせて [11]、自分の都合の良い食事を1食選び、
その1食から「今の食事から減らすカロリー」を減らすと、
(誤った知識1、2で述べたように害はないし、4で述べるように、効果もある)
3食均等に減らすよりも減り方が、はっきり分かる(精度が出る)からです。

そのときは、選んだ1食で今まで摂っていたカロリーを一度推定して、
それから「今の食事から減らすカロリー」を引いた食事を大まかに見繕うようにします。

恐怖2.食事を減らしても弊害が起こらない(現実にはない)しくみを想像する

【誤った知識4】
食ベる物が手に入らないときには、栄養の吸収率がよくなり、
消費カロリーも減って、飢え死にしないようにするしくみが体にある

【ここが誤り4】
食べるものが手に入らない事態が続くと、最後には飢え死にする危険が出てきます。もし、

  1) 長時間(長期間)食べないでいると、栄養素・カロリーの吸収率がよくなる
  2) 消費エネルギーも減る
  3) 体を動かさないでいれば、もっと消費カロリーが減る

というしくみが体に備わっていれば、
食べられなくても生き延びるチャンスが増えるはずだ、
そうであって欲しい、と望むのはもっともです。
しかし、現実の体は、希望のとおりではなく、

  1) 食べても食べなくても、カロリーの吸収率はもともと100% [12]
  2) 食事の間隔が開いても、消費エネルギーは減らない、
   (「食事回数 消費エネルギー」でウェブ検索してください)
  3) じっとしているだけで消費するカロリー:基礎代謝は消費カロリーの6~8割 [13]

という具合にできています。ですから、

長時間食事をしないと、吸収率が上がり、消費エネルギーが減るから、
そうなることを防ぐために、
誤り1 [14]:空腹で血糖値が低下して脳のはたらきが悪くなる、とも相まって)

  それまで摂っていなかった朝食を摂る [13]
  お腹が空いたときに何か食べる [1]

といったことを行うと、すべて体重が増える原因になりますし、

  カロリーの吸収を抑えるために食物繊維を摂る [15]

ようにしても、体重は減りません。

また、寝ている間も体温維持、脳や心臓を働かせるためのカロリー:基礎代謝が消費されているので、

  夕食を早い時刻に食べる [16]

ようにしても効果はありません。
そして、じっとしていても消費するカロリーが大きい(私たち哺乳動物の特徴です)
ということは、運動しても余りカロリーを消費しないことになりますから、

  歩行などの有酸素運動を続ける [17]

のも、思ったほど体重が減らない、という結果に終わるし、

  体を動かすためのカロリーが必要だから、しっかり食べておく、

というのが、摂取カロリーを増やし、体重が増える原因になっています。

恐怖3.体重減少が示す(現実にはない)体の異常を恐れる

食事を減らさなくても、病気で体重が減ることがあります [18]
これを知っているので、体重を減らすこと自体に不安を持ち、
その不安でダイエットが続けられなくなることがあります。

【誤った知識5】
標準体重の人が一番長生きしているから、それ以下に体重を減らしてはいけない

【ここが誤り5】
高血圧 [19]脂質異常症 [20]糖尿病 [21]など生活習慣病があるときには、目標体重 [22]として、
BMI値が22になる体重(身長(m)×身長(m)×22)が使われ、
「食事療法で摂取するカロリー」(誤り3. [23] で述べたように、誤りです)も、
その体重を基に計算されています。

根拠となる、日本でのBMIの基準値は、肥満に伴う病気が少ない値で決められています。(にもかかわらず、22という値が、死亡率の低さで決めた基準値と偶然同じになっています。興味がある人は、「BMI22の根拠」、「疫学」などでウェブ検索してください)
また、このような調査は、脳卒中の既往がある人や治療中の人を入れるかなど、
どんな人を調査対象にするかで違った結果になりますが、
どの方法がよいという結論は出ていません。

このようにしっかりした根拠がない、BMI=22という基準による不都合には、
次のようなことがあります。

元々筋肉の少ない「細長体型」の人の体重が増え、標準体重になると、
体脂肪率が高くなって生活習慣病になることがあり、「隠れ肥満」と呼ばれています。
このような人が体脂肪率を基準(男:10%、女:20%)にして目標体重を設定 [22]して、
食事療法を行うと、生活習慣病が治ることがあります。

さらに、BMIが25未満の人は「普通体重」ということになっていて、
体重を減らそうとあまり言われていませんから、
体重を減らすことによって病気を治すチャンスが少なくなっています。
そのことが、生活習慣病の患者さんが一向に減らない大きな原因です。

【誤った知識6】
食事のカロリーを減らした時には運動も始めないと筋肉が減る

【ここが誤り6】
体重から体脂肪の重さを引いた値を除脂肪体重 [24]といい、
筋肉、骨、内臓などの重さを表すということになっています。
一方、脂肪組織は、脂肪が8割と水分が2割の割合でできています。
(脂肪自体のカロリーは1gで9kcalなのに、
 体重は7.2kcal減らすと1gの割合で減る、とするのは、9×0.8=7.2kcalだからです)

脂肪組織に含まれていた水分は、(当然ですが)体脂肪ではないので、
その重さは除脂肪体重に含まれますから、
体脂肪が0.8kg減るときには、同時に除脂肪体重が0.2kg減ることになります。

ところが、この除脂肪体重の減少を、筋肉が減ったのだと誤解して、
ダイエットをするときには運動も始めなければならない、と唱えている人がいます。

実際には、運動しても筋肉が増えるところまではなかなか行きませんから、
「運動しても除脂肪体重は減る」のですが、その結果を見て、
「運動してもしなくても同じだからしなくてよい」、とは考えにくいようです。

このように、「除脂肪体重が減ること=筋肉量が減ること」、ではないので、
蛋白質を必要量摂っていれば、ことさらに運動しなくても、筋肉が減ることはありません。

脂肪が減るときに減る水分の影響も取り入れて、
体重から脂肪組織の重さを引いた値[除脂肪組織量 [25]:体重×(1-体脂肪率÷0.8)]は、
体重が減った時も大きな変化がないので、
筋肉が減っているのではないかと気にしている人は、計算し直すとよいでしょう。

【誤った知識7】
体重が減るのは体に悪いことだから、ダイエットは早く終わらせたい

【ここが誤り7】
確かに原因不明の体重減少 [18]は、がん、結核、甲状腺などの病気が隠れていることがあるので、それだけで病院(内科)に掛かるべき症状です。
それで、ダイエットがうまくいっていても、体重が減ってくると不安に駆られ、
ついつい余分に食べてしまい、体重が減らなくなる患者さんがいます。

一方、ある程度体重が減ってくると、体重の減り方がだんだん少なくなってくることが分かっています。
この原因は、体重が減ること自体によって、消費カロリーも減るから [26]で、
よく言われる、体吸収率上昇や基礎代謝低下による、停滞期・ホメオスタシス(恒常性) [27]によるものではありません。
この場合も、現実と、「ダイエットは早く終わらせたい」という気持ちとが食い違うので、その焦りで、ダイエットを途中で投げ出してしまうことがあります。

このように、体重が減ったときも、減りにくくなったときも、
ともに挫折のきっかけになるので、
減らしたカロリーによる体重減少量の理論値(体重の減り方のグラフ) [26]と、
実際の体重の推移に違いがないことを確かめていくとよいでしょう。

もし、理論値と比べて体重の減り方が少なくなっているときは、
油断、または不安、あるいは生活環境の変化で、
食事のカロリーが増えた、運動のカロリーが減った
という場合が多いです。

あと、女性の場合、生理周期 [28]の後半に水分が体にたまりやすくなって、
その分体重が減りにくくなくなることがあります。
それで不安になったり、反対に、周期の前半に体重が減って油断したりしないよう、
体重のグラフには、生理の開始日を記入していくとよいでしょう。
周期の後半に、体重や体脂肪計(誤差があります)で計った体脂肪率が減っていないように見えても、食事や運動が初めの計画通り実行できていれば、実際の体脂肪は減っています。

科学研究で主張されていても、もとは飢えへの恐怖から

ここまでで述べた誤った知識を主張する科学研究があれば、
それは、研究の主題が、飢えへの恐れから発想されていて、
その主題に一致する実験結果が選び取られ、強調されて、
誤った結論が出やすくなるから [29]です。
それらの研究が誤りであることは、常識や経験で分かります。
(たとえば、失神している人を見て、お腹が空いているのだから何か食べさせよう、
 とは考えないでしょう?)
分かってしまうと、肥満の克服までそれほど時間は掛からない [30]はずです。