体重の変化については、多くの誤解があります。
それは、体重が、運動や食事など行ったこととは関係がないように見える、
一見複雑な変化をするからです。
しかし、体重をいくつかの成分に分けて、
それぞれがどのように変化するかを知れば、
体重の変化を正しく解釈できるようになります。
(この記事は、「分けると分かる」の例となることを目指して書きました)
それによって、体重の変化を好ましい方向(減らす方向という人が多いでしょう)に向けることができます。
では、体重を大きく2つの成分、すなわち、
体脂肪量と
除脂肪体重
に分けてみましょう。
体脂肪量 とは、体脂肪の重さのことで、
体重と体脂肪率(体脂肪量が体重に占める割合)から、
体脂肪量 = 体重 × 体脂肪率
という式で求めることができます。
体重を減らしたいときには、この 体脂肪量 を減らさなくてはいけません。
体重のもう一つの成分である 除脂肪体重 は、体重から体脂肪を除いた重さなので、
除脂肪体重 = 体重 - 体脂肪量
という式で求めることができます。
(すでに、このブログの記事 [1]や「体重法方程式 [2]」の本を読んだ人は、
ここでいう除脂肪体重は除脂肪組織量 [3]のことだと思ってください)
この除脂肪体重は、筋肉・骨や内臓などの重さを表しているので、
体重を減らしても減らないようにしなければなりません。
さて、体脂肪量は、
食事で摂るカロリーを減らすか、
運動で消費するカロリーを増やすかすれば必ず減り、
また、それ以外の方法では減りません。
ここで聞こえてきた
「それを実行しているのに全然減らない」
との声(このブログには、「体重が減らない原因」などという検索キーワードでやってくる人が多いのです)には、
すでに書いた、運動しても体重が減らない原因 [4]、体重を減らす食事・その1 [5]、その2 [6]の記事でお答えします。今までの疑問が解決できると思うので、ぜひ読んでください。
また、体重を減らすために汗をかいたり、水分を控えたりしているという人は、
それではカロリーの動きが少ない、または、全くないので、体脂肪量が減らないというだけでなく、
危険ですから、こちらの記事 [7]も読んでください。
こんどは、除脂肪体重についてです。これはさらに、
筋肉・骨や内臓の重さと、
「それ以外の水分などの重さ」
に分けて考えます。
「それ以外の水分などの重さ」とは、
血液やいろいろな体組織(細胞の集まり)に含まれる水分や、
胃腸の中の食べ物、まだ排泄されていない尿や便(これもほとんどは水分)の重さ
のことですが、これは、筋肉・骨や内臓とは違った変化の仕方をするので分けて考えます。
(途中で整理しておくと、次のようになります。
体重 ┬ 体脂肪量
└ 除脂肪体重 ┬ 筋肉・骨や内臓の重さ
└「それ以外の水分などの重さ」 )
筋肉・骨や内臓の重さ が変化する速度は、比較的ゆっくりですが、
一定の条件下(蛋白質摂取量や無酸素運動など。次回に述べます)
では大きく変化(1か月で5kg以上)します。
「それ以外の水分などの重さ」は、反対に、
飲水・食事・運動などで、数分から数時間単位という早い速度で変化します。
しかし、この重さは、脱水や浮腫が起こらないように、
主に腎臓が水分の排泄量を調整するので、
比較的狭い範囲でしか変化しません(1日に1~2kg以内)。
「それ以外の水分などの重さ」は、体重に含まれるので、
それが変化すると、体重も変化します。
しかし、除脂肪体重に含まれるので、体脂肪量を変化させることはありません。
ですから、次に述べる「それ以外の水分などの重さ」を変化させる3つの原因を過大に見ないことが大切です。
1つ目の変化は、運動と食事によるものです。
これによる体重変化は大部分が汗や食品中の水分によるもので、
体重が増減しただけ体脂肪量が増減しているわけではありません。
特に、軽い運動によるカロリー消費はわずかで体脂肪はあまり減りません。
(体重75kg、30分歩行で体脂肪減少はΔ0.02kg。減らない理由 [4])
また、体脂肪計で体脂肪量が大きく変化していても、
それは体脂肪計が使っている測定法では避けられない誤差 [8]によるものです。
「計るだけダイエット」で1日に何度も体重を計っている人は、
この運動・食事前後の体重変化に振り回されて、
肝心の体脂肪の減少には効果がないことを無駄に行っています。
2つ目の「それ以外の水分などの重さ」の変化は、
月経がある女性の生理周期によるものです。
女性の体は排卵期以降(周期の後半に、黄体ホルモンという)ホルモンの働きで
水分を溜め込みやすくなるので、除脂肪体重が増えてきます。
これを、食物のカロリーの吸収がよくなって、
体脂肪が増えていくのだと誤解している人がいます。
(人間の消化管は、生理周期に関係なく、ほぼ100%栄養を吸収しています [9])
それだけならよいのですが、
「計るだけダイエット」で頻繁に体重を計っていると、
食事や運動に気を付けていても、周期の後半に体重がどんどん増えてくるように見え、
それがストレスになり、過食に走る、
そして本当に体脂肪が増えてしまう、
という人がいるのは気の毒なことです。
(計るだけダイエットを提唱した「ためしてガッテン」でも
生理周期による体重変化を指摘していましたが、解釈は間違っていました)
3つ目の「それ以外の水分などの重さ」の変化は、
ダイエット開始時に起こる、過剰だった水分の排泄によるものです。
元々体重が重い人の体組織(細胞の集まり。除脂肪体重に含まれる)には、
水分が溜まりやすくなっています。
ダイエットを始めると、これが尿から排泄されて、
減らしたカロリーから予想される以上に体重が減ることがあります。
(医学用語では、飢餓利尿、といいます)
このことを知らないでいると、
油断して当初の予定通りカロリーを減らさないで、その後体重が減らなくなったり、
初めのように体重が減らなくなったときに、つらくなって途中で挫折したり
することになります。
正しい知識を知っておくことは、まさに転ばぬ先の杖になります。
次回 [10]は、筋肉・骨が減る条件(蛋白質摂取量や無酸素運動など)と、
体重や体脂肪量の測定方法や誤差について述べます。