前回と同じく、患者さんの疑問と、それは心配いらないという私の説明を続けます。
してはいけないことが減ると、実際に挫折する原因が見えてきます。
・・・
患者さん「食事を減らしても問題は起こらない、
ということは分かってきました。
しかし、運動しないで、食事を減らすだけだと筋肉が減る、
と聞いたことがあるのですが、大丈夫でしょうか?」
私「筋肉が落ちる原因としては、運動しないことよりも、
むしろ、食事の蛋白質の不足によるものが問題です。
ただ、これについては、かなりカロリーを減らしても、
蛋白質を必要量摂っていれば、筋肉量が減ることありません [1]。
このブログでは、
今までの常識でしてはいけないと言われていたことには
根拠がない、だから気にしなくてよい、
ということを多数書いてきました。(4月27日 [2]など)
その中で、蛋白質を必要量以上に減らすことは、筋肉が減るので
してはならないこととして書いていますので、守ってもらいたいと思います。
今までダイエットで起こった不都合のほとんどは、
蛋白質の減らし過ぎが原因で起こっていたからです。
これさえ守れば、運動は全く行わなくても筋肉量(や除脂肪体重)
が減ることはありません」
患者さん「運動を続けないと減らした体重は維持できない、
という話も気になります」
私「これも、前々回 [3]に書いたように
『体重を維持するためには食事のカロリーを減らし続ける』、
と考えるべきです。
運動と食事の注意を同時に始めて、目標の体重に達した後、
食事で減ったカロリーと、運動で増えたカロリーの割合が
3:1くらいだとすると(実際にそれくらいの場合が多い)
運動を止めても、体重はあまり増えません。
しかし、食事を元に戻すと、体重は確実に増え続け、
1~2年後にはほとんど元の体重に戻ります。
運動は食事よりも、『やっている』という感じがするので、
その影響を大きく評価しがちなのですが、
体重を減らすのに貢献しているのは、ほとんどが食事なのです」
患者さん「運動をしている人のほうが健康だ。
という研究結果はどうなのでしょう」
私「『ブレスローの7つの健康習慣(1973年)』というのが有名です。
その中で、運動をしている人のほうが健康だ、という結果が報告されています。
しかし、発表から40年近くたつ間に、
このとおりに実行しても、健康にならない、という研究や、
実行している人のほうがむしろ血圧が高い、という研究も出ています。
この研究は、
『研究に再現性があり正しいと認められるには多くの壁があり、
その壁を乗り越えて生き残るものは少ない』、
という、研究そのものについての法則に当てはまる、
生き残れない研究の例だと思います。
(新たに発見されたしくみが役に立つと分かるまでに
越えなければならない関門・その1 [4]、その2 [5]、その3 [6]。
従来言われてきた方法を実行しても効果がない原因 [7])
なぜ、再現できなかったのかは、この回述べてきたように、
運動の効果が少ないこともあるでしょうし、
運動して消費カロリーを増やすことがむしろ体に良くない、
という説もありますので、それが原因かもしれません。
サルでも、摂取カロリーを減らすと寿命が延びる、 [8]
(小さくて寿命の短い動物では以前から出ていた)
という研究結果が昨年(2009年7月)出ました。
摂取カロリーを減らすと消費カロリーも減りますから、
『消費カロリーを増やすことが体に良くない』
という説と整合性があるのが興味深いところです」
患者さん「先生の話を聞いていると、まるで運動するな、
とおっしゃっているように思えてきました」
私「このブログでは、
実行が可能な運動では消費カロリーはあまり増えない、
と述べてきました。それはまた、
寿命が縮むほど運動するのも難しい、
ということでもあります。
運動には爽快感や、ストレス解消の効果がありますし、
軽い運動は空腹感を紛らわせる効果もあります。
また、食事だけでコントロールできない糖尿病の患者さんには、
運動を勧めることがあります。
(ただし、めったにありません。
ほとんどの患者さんは食事療法だけでよくなりますから、
『運動に逃げない』ようにしてください)
ですから、運動を禁じているわけではありません。
しかし、体重が重い人がひざや腰を痛めたり、
運動の消費カロリーを多く見積もり、食事のカロリーを摂り過ぎて
反って体重が増えたりするようだと、(そういう患者さんを多く見てきました)
運動は、始めからしないほうがましということになります」
患者さん「無理して運動しなくてもよい、ということがよく分かりました。
そのことが、実際にダイエットを成功させるためにどう役立つかを教えてください」
私「運動でも、食事でも、無理があると途中で挫折してしまいます。
体重方程式» 2.無理を減らす [9]
を読んだ上で、
入力欄 [10]に、食事に関連した生活環境を入力すると、
無理なく、減らしやすい食事を見つけるのに役立ちます」