高血圧、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病など、生活習慣病の患者さんに、
体重を減らしましょう、と勧めるのは医師の仕事のひとつです。
「ウーン、やっぱりそう来るよな」という顔をしている患者さんには、
その患者さんが辛そうなことはしなくてもよいということ、たとえば、
「ビールは止めなくてもいいです」であるとか、
「運動はしなくてもいいです [1]」と言うことにしています。
今度は、「そんな話は聞いたことがない」と不審がる患者さんが多いので、
全体のカロリーから見ると、
アルコールや運動や暴飲暴食のカロリーが多くないことを伝えます。
・ ビール350mlで摂っているカロリーは1日の総摂取カロリーの7%
・ 毎日30分のウォーキングで消費するカロリーは1日の全消費カロリーの5%
・ 月に2回の暴飲暴食で摂っているカロリーは1カ月の全摂取カロリーの5%
しかありません、というようにです。
これから分かることは、カロリーの大部分は、
・ アルコールではなく、食事で、
・ 運動ではなく、基礎代謝 [1](じっとしていても使うカロリー)で、
・ 暴飲暴食ではなく、ふだんの食事で、
摂ったり、消費したりしている、ということです。
その患者さんが生活習慣病を治すために必要な「減らすカロリー [2]」が
全摂取カロリーの20%だったときには、
「ビール、ウォーキング、暴飲暴食」を全部実行しても、まだ足りません。
しかし、カロリーの大部分を占める
「ふだんの、減らしやすい食事 [3]」から減らすようにすれば
何の問題もなく実行できるのです。
では、(患者さんだけでなく、私たち皆は)
なぜ全体から見ると小さい部分に捕らわれて、
それを減らすことにこだわっていたのでしょうか?
1つは、カロリーが高いものに目が奪われていたことによります。
カロリーが高いというのは、
食品のカロリーでいうと100g当たりのカロリー数が大きいということです。
(純粋の)アルコールは100gで700kcal、
食用油は100gで900kcalあるので、
ごはん100gが160kcalに比べるとカロリーが高い、ということになります。
ところが、アルコールや食用油など、カロリーの高いもので摂っているカロリーは、
全摂取カロリーの中では多くありません。
なぜなら、その食品で摂っているカロリーは、
100g当たりのカロリーに、摂った量を掛けて計算するからです。
100g当たりのカロリーが高くても、
摂っている量が(ごはんなどカロリーがふつうの食品に比べて)少ない食品からは、
あまりカロリーを摂っていません。
(極端な偏りのない食事をしている人が)
摂っている大部分のカロリーは、カロリーがふつうの
ごはんやパンなどの炭水化物や、肉や魚などの蛋白質から摂られています。
ですから、現在の日本で太っている人の多くは、
カロリーの高いものを摂っているからではなく、
カロリーがふつうのものを(量を)多く摂っている [4]ことが、その原因なのです。
気持ちのいいことをがまんしたり、つらいことをしたりすると、よいことがある
という考え方です。
子どものころから、勉強でもスポーツでも、つらいことをしなければ…、
という考え方に慣らされ、
しまいには、同じ結果だったらつらいほうの方法でしないと、
という人もいるくらいです(「タルチュフ」を出すのは不謹慎?)。
しかし、最近では結果優先になり、
いくら苦しいことをしても結果が伴わなければ評価されない
ことが多くなってきました。
この風潮については、いろいろな意見があるようですが、
こと、食事療法については、患者さんの寿命に影響するので、
結果優先(つまり、同じ結果なら楽な方法)がいいと思います。
美容目的のダイエットでも、結果でナンボでしょう。
このブログには、つらいことを避けて [5]、結果を出して [2]、それを維持する [6]方法を
たくさん(ほとんどそればかり)書きましたので、
あちこち読んでもらえると参考になると思います。