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ある説に合った例だけを出して、合わなかった例を隠せば、どんな説でも真実になる(一度良い評価を得た食品を患者さんに減らしてもらうのは難しい)

生活習慣病の患者さんに、
魚と大豆の摂り過ぎにも気を付けてください、
と言ったときにしばしば、
魚と大豆をしっかり摂るんですよね
と念を押してきます。

そして、魚と大豆製品は、肉や卵と同じだけカロリーがある(実際にあります [1])ことを伝えると、驚きます。

実は、初めに「魚と大豆の摂り過ぎ」というときにはさらっと言って、患者さんの念押しを引き出すようにしていました。その答えを聞いて驚いてもらったほうが、印象が深くなって、患者さんの記憶に残りやすいだろうと思ってい宝です。

ところが、次の診察で体重や検査値が改善していないことが多いのです。魚・大豆製品を減らしたか確認すると、

そういえば聞いたが、忘れていた、

との答えです。長年正しいと信じてきたことと異なる内容を理解 [2]してもらうために、
できるだけ「ゆっくり、謙虚に、繰り返し」ということを意識して話しているつもりですが、うまくいきません。

最終的に患者さんの摂取カロリーが減ればいいので、
魚と大豆製品の話が忘れられていたときには、
こだわらずに、本人が減らしやすい食品を減らしてもらうようにしています。

フィギュアスケートの技がうまくいかないときは、悪いところを修正するのではなく、
一から覚え直すという話も聞いたことがあります。
どうしても、魚と大豆の話を理解してもらう必要があるときは、驚ろかすよりも、腰を落ち着けてじっくりと説明したほうが結局早いのかもしれません。

魚や大豆製品の体に対する効果は、実際よりも増幅されて伝わっています。さらにカロリーが肉や卵と同じことが(故意ではないにしても)隠されていることが多いので、大いに注意が必要です。

このように、因果関係(関連)がないものをある(少ないものを多い)という誤り、
また、ある説に合う事例だけ取り上げ、合わない事例を隠すなら、どんな説でも正しくなる、ということを示すたとえ話をしておきましょう。

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今ほど船が安全でなかったころのヨーロッパで、
航海の守護聖人である聖○○○○をお祭りしている教会には、
航海の無事を祈願したのち帰ってきた船の絵を奉納する習わしがあった。

ある男が聖人の霊験に疑いがあると言ったので、
教会の僧が「無事に帰港した多くの船の絵が目に入らぬか?」と翻意を促した。
男は「難破して沈んだ船の絵はどこにあるのだ?」と言って、自分が正しいことを主張したが、僧は男が何を言っているのか分からなかった。
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現代風に解釈すると、
守護聖人に祈願した船と、しなかった船で難破率を比べないといけないし、
難破した船の絵がなければ(実際にないので)霊験は無限大に見えるでしょう。
(男の指摘は正しいです)

昨今、魚と大豆製品の摂り過ぎ [3]で体重を増やして、血圧 [4]コレステロ-ル [5]血糖値 [6]を上げている人がかなりいます。
そうすると、

魚や大豆製品は、現代の守護聖人、

というだけでは足りなくて(守護聖人は、少なくとも、悪いことをことをしてませんでしたから)
「トロイの木馬」のような別のあだ名が必要なのかも知れません。