高血圧・脂質異常症(高脂血症)・糖尿病などの生活習慣病は、
体脂肪(内臓脂肪)を減らすと治る、
というのがメタボリックのシンドロームの元々の概念です。
このブログにも書いてきたとおり、
カロリーを減らすと体脂肪・体重が減って生活習慣病の患者さんが治る
ことはしばしばあります。
しかし、多数の医師にとって、
生活習慣病は、治る病気だとは思われていません。
そう思うに至ったのは、
現在行われている生活指導、食事療法の(惨めな)結果を見た [1]
からに違いありません。
そこで、病気ごとに、それぞれの学会の指導方針では、
いったいどのような生活・食事指導をすることになっているのか
を見てみましょう。
高血圧:日本高血圧学会
(高血圧治療ガイドライン2009 [2])
伝統的に、食事中の塩分を減らすこと:減塩で血圧が下がる
といわれてきたので、それが1番に挙げられています。
また、それに関連して、カリウムを摂ると、塩分が体から排泄されるので、
カリウムを含む野菜や果物を摂ることになっています。
次に肥満が言われていますが、BMI法による基準が書いてあるだけで、
具体的に何をすればよいのかは書いていません。
運動については、有酸素運動を言っているので、
体脂肪・体重を減らすことを目指しているのでしょう。
まとめると、長い間、減塩が指導の中心になってきたので、
体脂肪・体重を減らすことについてはあまり興味がない、といった感じです。
脂質異常症(高脂血症):日本動脈硬化学会
伝統的に、コレステロールや脂肪酸など脂肪の種類ごとに、
それらが動脈硬化の進行にどう影響するかが研究されてきました。
一般向けには、動物性の脂肪はとか、
魚油に含まれる○○酸は、などという形で伝えられています。
ところが、この学会の一般向けのサイト [3]では、
具体的な方法が10カ条という形で載っていて、
そのうち7カ条がカロリーを抑えることを目指した内容になっています。
ただ、実際には、「食物繊維を先にたくさん食べましょう 」のように、
効果が少なく、実行困難なものが挙がっています(その理由 [4])。
カロリーを減らして体脂肪・体重を減らすことに興味があるが、
具体的な方法は検討中といった感じです。
糖尿病:日本糖尿病学会
もともと、カロリー制限を一番に考えてきたので、
「食品交換表」を使う食事療法を前面に押し立てています。
ただ、標準体重を使ってカロリーを設定する [5]ことと、
「食品交換表」を使うのは実行が煩雑で難しいことにより、
治る人が少ないところが問題です。
それでも、カロリーに対してまっすぐ向き合っていますので、
高血圧や、脂質異常症に比べて、
実際に体重が減って病気が治っている例はもっとも多いと思います。
それなのに、なぜ、糖尿病の専門医たちが
「糖尿病は治らない。コントロールできるだけ」
と言うのでしょうか?
糖尿病外来をしていたころには、
今まで診た患者さんのうち、治った患者さんは来なくなって、
外来に通い続けているのは治らない(そしてしばしば悪化する)患者さん
ばかりでしたから、その影響が大きいと思います。
治った患者さんをふだん見ないことが、「糖尿病は治らない」という
正しいとされている法則に合わない例を隠してしまう [6]ので、
誤った法則も追認し続けることになるのでしょう。
(糖尿病を専門にしておられる先生方は、他科の待合室で、以前の患者さんに、
「あのときはありがとうございました。ここ何年も健康診断の血糖値は正常です」
などとあいさつされたことはありませんか? 彼は治っています [7])
高血圧・脂質異常症・糖尿病の患者さん、専門にしている医師へ
以上、
どの生活習慣病の学会・専門家も、今までの歴史があり、
研究の方向は遺伝子レベルでの病気の原因究明などに向かっているので、
カロリーを減らすことに目が向いていません。
しかし、このブログで紹介している食事療法は、
従来のものより効果があり容易に実行できるので、多くの患者さんが治ります。
一生、薬をのみ続けるつもりでいる患者さんたちへ。
体脂肪が減って病気が治れば、薬を止めることができます。
生活習慣病の外来を持つ勤務医の先生方。
患者さんを治していけば、
現在の昼食も取れない勤務状況が少しずつ改善していきます。