糖尿病が治らないのは、糖質(炭水化物)へのこだわりが一因・その1 (糖質制限食では、糖質をいくら制限しても、蛋白質を減らさないから糖尿病が治らない)

糖尿病が治らないのは、

1.食事療法のカロリー設定が適切でない

2.糖質(炭水化物)を減らすことにこだわって、蛋白質を減らそうとしない

3.従来の「糖尿病は治らない」という考えから抜けきれない

からだ、ということを以前述べました。

今回は、特に、

糖質制限食(カーボカウント、ローカーボ、低炭水化物、アトキンス、
などというダイエット・食事療法も同じような内容です)

という食事法が糖尿病を改善させる、と言っている人たちが、
上の、2.糖質へのこだわり=糖質に目を奪われていたことで、

蛋白質がブドウ糖や脂肪の原料になることに気が付いていない
(または、気が付いていないふりをしている)ことについて述べます。

「糖質制限食」というキーワードでこのブログを訪れてくれた人は、
糖質制限食では制限されていない蛋白質がブドウ糖の原料
ということを不審に思うかもしれません。
しかし、私が知る限り、糖尿病が「治った」人は、糖質制限食ではなく、
蛋白質のカロリーも含めた「カロリーが少ない食事」を実行している人です。
(「カロリーを減らしても体重が減らなかった」という人はこちら
ためしに一度読んでみてください。

また、糖質制限食に効果がない原因を理論的に知りたい人は、
次回の記事から読んでください。

糖尿病の患者さんで、すでに糖質制限食を実行している人は多い

まず初めに、糖尿病になっていた人たちの食事が、
糖質制限食を唱えている人たちが勧める食事によく似ている
ということを指摘しましょう。
いわく、

肉・魚・大豆製品などの蛋白質はしっかり摂る、
糖質(炭水化物)、特に白米や麺類など精製糖質を控える、
アルコールは糖分を含まない蒸留酒を、等々。

糖尿病になった人たちに、どのような食事をしているかを聞くと、
このような、「これこそ糖質制限食」を摂っていると言う患者さんがいます。

そして、もともと甘いものは食べないし、
ブドウ糖の原料になる炭水化物も控えているから、
自分が糖尿病のはずがない、と続きます。

それで、体重は減りましたか? と聞くと、

確かに、体重は減っていないが、
油物だって控えている(これは糖質制限食とは違うかもしれません)。
糖分や脂肪の元など本当に摂っていない。

という答えになります。
(さすがに体重は80kg、体脂肪率が28%とかありますから、
これは言い訳のしようがありません)

この人たちに糖質制限食を厳格に実行してもらっても、
たぶん糖尿病が治ることはないと思います。

では、なぜ、糖質制限食で改善し、それに執着し続ける人がいるのでしょうか?

改善するし、弊害がないから固執する

まず、糖質を制限することで、
総摂取カロリーが減る人が多いということがあります。

それによって、体脂肪が減り、しかも蛋白質は制限していない、
(当然、蛋白質の必要量が摂れているので)
筋肉など除脂肪体重の減少がない、
従って、消費エネルギー(基礎代謝基準値)があまり減らないので、
改善する(少し良くなる、しかし治らない)人が多いのだと思います。

実行や理解が簡単なだけでなく、適度に厳しいところがかえって魅力

さらに、実行するときに、制限がちょうど良いくらいの厳しさというのも、
長続きする原因だと思います。
肉や魚などの蛋白質や、味を良くする油脂類などが禁じられていないので、
いわゆる「おいしいもの」は食べ続けることができます。

その一方で、糖質(炭水化物)はいろいろ制限されますが、
全くダメというのでもなく、玄米など未精製の穀物なら可だったりして、
「炭水化物食べたぁい」、という状態になることもありません。

何より、少し面倒でも制限がある食品の種類を覚える、
というのがカロリー(という抽象概念と具体的応用)について知るより
単純で理解しやすい、のがいいのかもしれません。

そして、結局
治らない人や、つらくて実行できない人は、糖質制限食から離れていくので、
「改善はする」が治らない人ばかりが残って
この食事法は正しい、ということになるのでしょう。

治った人は皆カロリーが減っている

一方、糖尿病が治った人(元・患者さん)の話は、それぞれですが、
共通しているのは、以前よりも食べる量が減っているということです。
さらに、それを無理せずに続けているということも共通かもしれません
また、必ずしも「食品交換表」を使った食事療法や運動を続けている人ばかりではありません。

糖尿病が(「改善する」のではなく)治った人は、
どの食品に糖分が含まれているかなどは知りません
(知らなくても治っています)。
ただ、以前より(自分が減らしやすい)食事や食品の量を減らして、
カロリーが減っただけなのです。

次回の記事では、治らない原因を、体の中で起こっていることを述べることで解き明かします。

コメント / トラックバック4件

  1. […] 医師の間では、生活習慣病を治すために炭水化物(=糖質)を減らすという 「糖質制限食」が興味の対象になっていて、患者さんたちと歩調が合っていたようです。 […]

  2. taijuuh より:

    石田さん

    コメントありがとうございます。
    糖質制限の問題をご理解いただいた様ですので、この記事を書いた甲斐がありました。
    ただ、石田さんご自身の例でも明らかなように、糖質制限単独では、
    カロリー過多になりやすく、糖尿病が治らないことが多いことが問題なのです。

    忙しかったり、体が不自由だったりして
    石田さんのようにはきつい運動ができない患者さんが、
    糖質制限をしても糖尿病が治りにくいことはご理解いただけると思います。
    そういう人でも、糖尿病の食事療法(カロリー制限)が確実に実行できれば、
    糖尿病が治った状態に至り、それを維持できることが多いです。

    なお、体脂肪を減らすために運動は全く必要でなく、
    カロリー制限だけで達成できます。
    (このブログのあちこちでも書いていますので、
    興味があればページ右上の検索欄で探してください)

    私は日常生活以外に取り立てて運動をしたことがありませんが、
    70kgあった体重を53kgまで減らして、20年以上維持しています。
    体脂肪率は(20年前には計れませんでしたが)13%です。

  3. 石田 より:

    こんにちは、糖質制限を実施している石田と申します。

    -> たんぱく質が増える 
    -> 体脂肪が増える
    -> インスリン抵抗性が増える 
    -> 糖尿病が治らない

    このサイクルは分かりますが、体脂肪を増えないように運動すれば
    いいのではないでしょうか?
    実際、私は糖質制限(3回の主食(ごはん、パン、麺類)を抜く)と
    運動(ジョギング10000回、縄跳び30分、筋トレ30分)を実施
    してから、体重が標準体重になり、体脂肪率は15%を維持しています。

    つまり、糖質制限(血糖値を上げない)と運動(体脂肪を増やさない)
    両方実施すれば、カロリー制限よりいいのではないですか?

  4. […] 前回は、糖質制限食(カーボカウント、ローカーボなども同じ)では、 […]


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