医師の間でも、目標体重をどう決めるかにはいろいろな意見がある (このブログの方法では、生活習慣病が治る人を増やすために、体形を考えた体脂肪率を使う)

前回、食事療法で生活習慣病が確実に改善しない理由の1つは
目標体重として、BMIから計算した標準体重を使うことだと述べました。

BMI法による標準体重とは、この体重の人が最も死亡率が少なかったという研究を根拠にして作られたもので、

m(メートル)で表した身長の2乗×22 (kg)で計算されます。
(身長が1.7mなら1.7×1.7×22 = 63.4kg)

このような研究では、数万人の人を何年も追跡して調査するので大きな費用が掛かります。それに加えて、高価な計測機器や複雑な計算法が必要だと、その研究の結果を、望ましい体重の目安としては使えなくなるということもあって、
簡便性や、再現性のある測定項目や計算式が使われます。
その点で、身長計と電卓さえあれば直ちに結果が出るBMI法は優れた方法です。

しかし、病気の有無や、(筋肉質や痩せ型などの)体形を取り入れたものではない
(初めから調べていない)ので、基準値より少ないのに発病・死亡する人や、基準値より多くても発病・死亡しない人が多くなる(関連性が低い)という問題があります。

  • やせている人のほうが死亡率が高かった、という調査結果の解釈でよく言われる、調査の開始時には分からなかった(がんなどの)病気ですでに体重が減り始めていたから

という主張が正しいか誤りなのかは、この調査の結果からは確かめようもないことなのです(このような主張に意味がない訳ではありません。次の研究で何を調べるかを決めるときに役立つからです)。

また、蛋白質を摂り過ぎて太っている人は多い(蛋白質を減らしてもよい!)で述べた生まれつきの体形について、

  • もともとやせ型の(筋肉の少ない)人では標準体重でも体脂肪が多くなるので、生活習慣病が多い
  • 反対に、標準体重より体重が重くても体脂肪が少なく筋肉質の人には生活習慣病が少ない

ということもこの研究からでは分かりません。

腹囲は、BMI法で考慮されていない体形を反映した測定項目で、
特定健診(いわゆるメタボ健診)でも使われています。
BMI法と組み合わせた計算式を作れば、
より病気や死亡との関連性が高くなった可能性があった一方、
簡便性がなくなり使われなくなっていただろう、というのが難しいところです。

特定健診のように腹囲だけでメタボかどうかを判定する方法は、
病気や死亡との関連性が低いので、
見直しの必要がいわれる(「腹囲 見直し」でウェブ検索してください)前から評判はよくありませんでした。

このブログで紹介している「体重方程式」で使っている体脂肪率も、体形を考慮した測定項目です。
数千人の体脂肪計で測った体脂肪率と、生活習慣病との関連から、

  • カロリーを多く減らしても、病気が治らないより治るほうがよい

という考えに基づいて、
男性は体脂肪率が10%、女性は20%になるような体重を目標体重としています。
(カロリーを多く減らしてもつらくないようにする方法も、このブログで多数紹介しています)

測定するときの簡便性については、
現代の日本なら一度数千円で体脂肪計を購入すれば、測定は体重を測るだけのときとそう変わりません。
計算式はやや複雑なので、上記のウェブページで目標体重を使った「今の食事から減らすカロリー」が計算できるようにしてあります。

調査の対象になる人や費用、期間などの制約によって、いろいろな研究が行われ、
その結果から異なった目標体重が出てきます。
生活習慣病の食事療法を行うときには、その中で、

  • 病気や死亡率との高い関連性を重視して
  • 目標体重が少ない値になり、カロリーを多く減らすことになるものを使う

ほうが、治る可能性が高くなります。

体脂肪率から「減らすカロリー」を出す方法は、それを実現する方法です。

コメント / トラックバック4件

  1. […] ることがあり、「隠れ肥満」と呼ばれています。 このような人が体脂肪率を基準(男:10%、女:20%)にして目標体重を設定して、 食事療法を行うと、生活習慣病が治ることがあります。 […]

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