体重を体脂肪量と除脂肪体重に分けて考えると、体重変化の原因が分かる・その1(この違いが分からずに効果がないことをしている人が多い)

体重の変化については、多くの誤解があります。

それは、体重が、運動や食事など行ったこととは関係がないように見える、
一見複雑な変化をするからです。
しかし、体重をいくつかの成分に分けて、
それぞれがどのように変化するかを知れば、
体重の変化を正しく解釈できるようになります。

(この記事は、「分けると分かる」の例となることを目指して書きました)

それによって、体重の変化を好ましい方向(減らす方向という人が多いでしょう)に向けることができます。

では、体重を大きく2つの成分、すなわち、

  体脂肪量
  除脂肪体重

に分けてみましょう。

体脂肪量 とは、体脂肪の重さのことで、
体重と体脂肪率(体脂肪量が体重に占める割合)から、

  体脂肪量 = 体重 × 体脂肪率

という式で求めることができます。
体重を減らしたいときには、この 体脂肪量 を減らさなくてはいけません。

体重のもう一つの成分である 除脂肪体重 は、体重から体脂肪を除いた重さなので、

  除脂肪体重 = 体重 - 体脂肪量

という式で求めることができます。

(すでに、このブログの記事や「体重法方程式」の本を読んだ人は、
 ここでいう除脂肪体重は除脂肪組織量のことだと思ってください)

この除脂肪体重は、筋肉・骨や内臓などの重さを表しているので、
体重を減らしても減らないようにしなければなりません。

さて、体脂肪量は、

  食事で摂るカロリーを減らすか
  運動で消費するカロリーを増やすかすれば必ず減り

また、それ以外の方法では減りません

ここで聞こえてきた

  「それを実行しているのに全然減らない」

との声(このブログには、「体重が減らない原因」などという検索キーワードでやってくる人が多いのです)には、
すでに書いた、運動しても体重が減らない原因体重を減らす食事・その1その2の記事でお答えします。今までの疑問が解決できると思うので、ぜひ読んでください。

また、体重を減らすために汗をかいたり、水分を控えたりしているという人は、
それではカロリーの動きが少ない、または、全くないので、体脂肪量が減らないというだけでなく、
危険ですから、こちらの記事も読んでください。

こんどは、除脂肪体重についてです。これはさらに、

  筋肉・骨や内臓の重さと、
 「それ以外の水分などの重さ

に分けて考えます。

「それ以外の水分などの重さ」とは、
血液やいろいろな体組織(細胞の集まり)に含まれる水分や、
胃腸の中の食べ物、まだ排泄されていない尿や便(これもほとんどは水分)の重さ
のことですが、これは、筋肉・骨や内臓とは違った変化の仕方をするので分けて考えます。

(途中で整理しておくと、次のようになります。

  体重 ┬ 体脂肪量
     └ 除脂肪体重 ┬ 筋肉・骨や内臓の重さ
             └「それ以外の水分などの重さ」  )

筋肉・骨や内臓の重さ が変化する速度は、比較的ゆっくりですが、
一定の条件下(蛋白質摂取量や無酸素運動など。次回に述べます)
では大きく変化(1か月で5kg以上)します。

「それ以外の水分などの重さ」は、反対に、
飲水・食事・運動などで、数分から数時間単位という早い速度で変化します。
しかし、この重さは、脱水や浮腫が起こらないように、
主に腎臓が水分の排泄量を調整するので、
比較的狭い範囲でしか変化しません(1日に1~2kg以内)。

「それ以外の水分などの重さ」は、体重に含まれるので、
それが変化すると、体重も変化します。
しかし、除脂肪体重に含まれるので、体脂肪量を変化させることはありません。
ですから、次に述べる「それ以外の水分などの重さ」を変化させる3つの原因を過大に見ないことが大切です。

1つ目の変化は、運動と食事によるものです。
これによる体重変化は大部分が汗や食品中の水分によるもので、
体重が増減しただけ体脂肪量が増減しているわけではありません。

特に、軽い運動によるカロリー消費はわずかで体脂肪はあまり減りません。
(体重75kg、30分歩行で体脂肪減少はΔ0.02kg。減らない理由
また、体脂肪計で体脂肪量が大きく変化していても、
それは体脂肪計が使っている測定法では避けられない誤差によるものです。

「計るだけダイエット」で1日に何度も体重を計っている人は、
この運動・食事前後の体重変化に振り回されて、
肝心の体脂肪の減少には効果がないことを無駄に行っています。

2つ目の「それ以外の水分などの重さ」の変化は、
月経がある女性の生理周期によるものです。

女性の体は排卵期以降(周期の後半に、黄体ホルモンという)ホルモンの働きで
水分を溜め込みやすくなるので、除脂肪体重が増えてきます。

これを、食物のカロリーの吸収がよくなって、
体脂肪が増えていくのだと誤解している人がいます。
人間の消化管は、生理周期に関係なく、ほぼ100%栄養を吸収しています

それだけならよいのですが、

  「計るだけダイエット」で頻繁に体重を計っていると、
  食事や運動に気を付けていても、周期の後半に体重がどんどん増えてくるように見え、
  それがストレスになり、過食に走る、
  そして本当に体脂肪が増えてしまう、

という人がいるのは気の毒なことです。

(計るだけダイエットを提唱した「ためしてガッテン」でも
 生理周期による体重変化を指摘していましたが、解釈は間違っていました)

3つ目の「それ以外の水分などの重さ」の変化は、
ダイエット開始時に起こる、過剰だった水分の排泄によるものです。

元々体重が重い人の体組織(細胞の集まり。除脂肪体重に含まれる)には、
水分が溜まりやすくなっています。

ダイエットを始めると、これが尿から排泄されて、
減らしたカロリーから予想される以上に体重が減ることがあります。
(医学用語では、飢餓利尿、といいます)

このことを知らないでいると、
油断して当初の予定通りカロリーを減らさないで、その後体重が減らなくなったり、
初めのように体重が減らなくなったときに、つらくなって途中で挫折したり
することになります。

正しい知識を知っておくことは、まさに転ばぬ先の杖になります。

次回は、筋肉・骨が減る条件(蛋白質摂取量や無酸素運動など)と、
体重や体脂肪量の測定方法や誤差について述べます。

コメント / トラックバック5件

  1. taijuuh より:

    鷹 さん

    私のブログにも来ていただきありがとうございます。

    > …目標体重(50kg)×1.0の蛋白質…摂取カロリーを1000kcal以内…脱力感というか倦怠感がすごい

    私は、ダイエット時に起こる体調不良は、たまたま同じ時期に起こっただけだと考えています…

    「基礎代謝とは、生命活動を維持するために必要なエネルギー」

    という定義を知って、このエネルギーを毎日摂らないと体調が崩れる気がする人もいるかもしれません。しかし、私が基礎代謝を定義するなら、

    「基礎代謝とは、安静時にも生命活動で消費されているエネルギー量のこと」

    にだけして、その説明として、

    「このエネルギーを、数週間、食物から全く摂らないでいても、
     体は、蓄えた脂肪や蛋白質から、必要なだけ供給することができる。

     もちろん、食物を全く摂らないまま、その期間を過ぎると、
     脂肪や蛋白質のエネルギーが枯渇し、
     生命活動に必要なエネルギーが供給できなくなると、生命の危険が生じ、
     ついには餓死に至る。(逆に言うと、それまで餓死の心配はない )」

    みたいな記述を付け加えると思います。

    また、糖質制限を試みて挫折した人たちが、
    (脳に必要なエネルギーが供給されないから)
    「イライラする」、「頭がぼーっとする」等の症状を訴えているのは、

      糖質制限で脳のエネルギーである血中のブドウ糖濃度(血糖値)は下がらない
     (これは正しい

    ので、そういった症状が出ると思い込んでいるのだと考えています。

    ダイエット、食事療法時の体験談としては、

      糖質制限の讃美者は(体には毒である糖を取らないので)
      食後も頭がすっきりしている、

      超低カロリー療法(VLCD)や断食道場で、
      かえって空腹感が少ない、体調がよくなった、

      神経性食思不振症(いわゆる拒食症)の患者さんたちが、
      基礎代謝量以下の食事しか摂らずにいながら、
      生命活動に必要に量をはるかに越えるエネルギーを使って、
      疲れ知らずにガンガン運動をしている、

      好きなことに夢中になって、寝「食」を忘れている最中は、疲労感を感じていない、

    といった、むしろ元気になる方向のものもあるので、ダイエット時に起こる体調不良(感)には振り回されず、淡々と実行を続ければよいと思います。

    あと、このブログの空腹感についての記事()も鷹さんのお役に立つかもしれませんので、読んでみてください。

    > 「ホメオスタシス」が学術的にもよく語られるようになった経緯…存在するのか

    基本的に、科学の世界では何事も否定しません

    思い付きだろうと、その時点では見荒唐無稽だろうと、まずは発表してみればよいのです。その発表された内容が、

      事実に合致し、
      現象を説明できて、
      役に立てば、

    科学の世界で生き残っていきます。(

    しかし、「ホメオスタシス」という考え方は、
    現象をただ記述しているだけで、
    その状態になったときの指針を示唆してくれないので、役には立ちません。
    そのうち、誰も語らなくなる考え方だと思っています。

    以上の考えは、過去の記事にも書いていますので読んでみてください。

    また、このブログ右上の検索欄に「ホメオスタシス」と入力すると、googleTM がこのブログの中から参考になる記事を選び出してくれます。活用してください。

  2. より:

    いつも先生のブログを拝見させて頂いております、鷹と申します。
    只今先生の理論を基盤の一つとしたダイエット生活をしております。
    ですが、やはりその他にたくさんある多種多様な「それらしい理論」も気になってしまいます。

    たとえば、一気に摂取カロリーを減らすと栄養不足で健康的に痩せられない、とかいうものですが、こちらのブログでは基本的には問題ないとされていると思います。
    私は実際に、除脂肪体重計(40kg)~目標体重(50kg)×1.0の蛋白質をとり、かつ摂取カロリーを1000kcal以内に抑える生活をしていた時、体の脱力感というか倦怠感がすごいのですが、やり方が悪いからなのでしょうか?

    また、よく「ホメオスタシス」がトピックとして必ず出てくるのですが、世の中には停滞期なんてまったくなかった、と言う方もいるので、やはり体重が減ることで基礎代謝も比例して減ったにも関わらず、摂取カロリーも合わせて減らしていないから、という事でいいのでしょうか。今一度「ホメオスタシス」が学術的にもよく語られるようになった経緯や実際本当に存在するのかなど、解説して頂けたらと思います。

  3. […] 【ここが誤り】 体重から体脂肪の重さを引いた値を除脂肪体重といい、 筋肉、骨、内臓などの重さを表すということになっています。 一方、脂肪組織は、脂肪が8割と水分が2割の割合 […]

  4. taijuuh より:

    [じてトレ]のサイトから、除脂肪体重と体脂肪量の記事として
    リンクをもらいました。

    自転車愛好家の皆さんには、
    体重を体脂肪量と除脂肪体重に…その2
    体脂肪量の定義
    の記事もお役にたつと思いますので、あわせてお読みください。

    以上、ブログ管理人からのコメントです。
    ごゆっくりどうぞ。

  5. […] 前回から、体重をいくつかの成分に分けて考えると、 その変化を […]


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